2013年9月22日日曜日

集団的自衛権の行使 戦後平和主義の否定に等しい (愛媛新聞 社説)

愛媛新聞 社説
集団的自衛権の行使 戦後平和主義の否定に等しい 
2013年09月21日(土)

 政府は、集団的自衛権の行使を禁じている憲法解釈の見直しに向けた議論を本格化させた。
 安倍晋三首相が設置した安全保障に関する有識者懇談会が7カ月ぶりに議論を再開、全面的な行使容認を盛り込んだ報告書を年内にもまとめる段取りだ。

 集団的自衛権の行使容認は、専守防衛を旨としてきた日本の安全保障政策の大きな転換となる。武力行使の領域が際限なく拡大され、海外での戦闘行為にも道を開くことになりかねない。平和憲法の下、日本が戦後一貫して堅持してきた平和主義の否定であり、断じて許されない。

 歴代政権は、日本は国際法上、集団的自衛権を有しているが、憲法9条で許容される自衛のための必要最小限度の範囲を超えるとして行使を認めていない。政府の「法の番人」である内閣法制局の長官経験者らも、解釈改憲には否定的な見解を示している。

 それなのに政府は、行使容認の目的を国民に十分説明しないばかりか、真正面から憲法改正を論じようともしていない。衆参で過半数を制した余勢を駆って、歴代内閣が積み上げてきた憲法解釈を独断で変更しようとする姿勢には危惧を感じざるを得ない。

 第1次安倍政権時に懇談会がまとめた報告書は、公海上の米艦の防護や、米国を狙った弾道ミサイルの迎撃について集団的自衛権を認めるよう求めた。今回は類型や同盟・友好国の対象を拡大する方向で議論が進む見通しだ。

 しかし、専門家の間でも有事の場合、米艦防護などは個別的自衛権の発動で対応可能との見方が強い。非現実的な類型を種々想定し、集団的自衛権の行使を包括的に容認しなければならない緊急性も必然性もないのだ。

 首相の念頭には、北朝鮮の核開発や中国の海洋進出など、変化する東アジアの安全保障環境への危機意識があるとみられる。だが、今、行使容認に踏み込めば、関係改善の糸口が見えない中国や韓国はじめ、周辺国をいたずらに刺激し、反発を招くだけだ。

 同盟国のアメリカは、自衛隊の活動領域拡大に歓迎の意向を示すものの、アジアでの影響力維持を狙う戦略上、日本と中韓との関係悪化を回避したいのが本音のはず。日本が軍事的貢献度を高めても、日米安保体制強化にはつながるまい。むしろ、共通敵との戦争に巻き込まれるリスクが増すだけになりかねない。

 日本がとるべき道は、唯一の被爆国、戦争を放棄した平和国家として、国際社会で核兵器廃絶や軍備削減、外交による平和的紛争解決を主導することだ。強引な政権運営によって、国民を再び危険にさらすような対応を急ぐことではない。

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