文科省の姿勢 不当な恫喝は許されない
2014年4月19日
厳密な検証もないまま一方的に相手を非難する態度が、公人として許されるのか。
竹富町教育委員会の慶田盛安三教育長を呼びつけた文部科学省の前川喜平初等中等教育局長は、同町教委の言い分に聞く耳を持たない姿勢に終始し、「どんな説明があっても違法なものは違法だ」と一方的に「違法」呼ばわりした。社会人にあるまじき態度である。
学校現場を混乱させる不合理な要求を一方的に突き付け、従わなければ訴訟すると迫る文科省のやり方は恫喝(どうかつ)そのものだ。文科省は、今度は県の諸見里明教育長を呼びつけるという。県は、民主的でもなければ合理的でもない文科省の高圧的な要求を、毅然(きぜん)と退けてもらいたい。
そもそも「違法」とは言いがかりに等しい。地方教育行政法は各市町村教委が教科書の採択権を持つと定める。竹富町教委の判断はこれに基づくから、適法だ。
文科省は教科書無償措置法に違反していると主張するが、竹富町教委は国の「無償措置」を受けていないのだから、同法に違反していない。国による教科書の無償給付を受けずに自前で教科書を配布した行為について、政府は2011年11月、「無償措置法でも禁止されるものではない」と閣議決定し、つい先日も内閣法制局がその答弁は有効と述べたばかりだ。
前政権では違法でないと閣議決定までしたのに、極めて保守的な人物が首相や文科相になった途端、手のひらを返して「違法だ」と強硬に主張する。法治国家らしからぬ振る舞いをしているのは、いったいどちらの方か。
文科省は、極めて保守色の濃い育鵬社版に採択し直し、既に購入してある東京書籍版を副教材として使うよう求めた。れっきとした検定教科書があるのに、あえて別の教科書を強制するのは非合理的だ。新学期の途中での変更は学校現場に混乱をもたらすだけで、有害ですらある。とても理性的とは思えない。
改正教科書無償措置法の成立を受け、竹富町教委は八重山採択地区協議会から離脱する方針だが、下村博文文科相は、今度は分割が望ましくないと撤回を迫る。
学校の自主性確保の観点から採択地区の小規模化を打ち出した2009年の閣議決定にも矛盾する。保守色の濃い教科書を強制する意図としか思えない。このような横暴を見過ごす国会も国会だ。
竹富町教委、是正拒否を説明 国、育鵬社求め訴訟も
2014年4月18日
【東京】竹富町教育委員会の慶田盛安三教育長は17日、文部科学省で前川喜平初等中等教育局長と面会し、同一採択地区内で公民教科書が統一されていない八重山教科書問題をめぐる国の是正要求に応じない方針を説明した。文科省側は育鵬社版を採択した上で、東京書籍版を副教材として活用するよう提案し、教科書を変更するようあらためて求めた。竹富町教委の判断によっては訴訟も辞さない意向を伝えた。これに対し、慶田盛教育長は「持ち帰って慎重に検討する」と回答し、協議は平行線に終わった。八重山教科書採択地区からの分離を要望している町教委は、県教委が5月に教科書採択地区の再編を決定することを踏まえて、再度対応を協議する方向だ。
前川局長は(1)使用する教科書を育鵬社版に採択し直す(2)改正教科書無償措置法に基づき、八重山教科書採択地区を構成する石垣市と与那国町の2市町と規約作りに取り組む―の2点を求めた。その上で東京書籍版を副教材として活用するよう提案した。町教委に対する違法確認訴訟については「2点の取り組み状況を見た上で判断する」とした。
一方、慶田盛教育長は八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長が全国的に行われている教員による順位付けを廃止したり、規約を変えたりなどした経緯を報告。是正要求に従わず、国地方係争委員会に不服申し立てをしない町教委の方針を説明した。採択地区協議会から離脱し、単独採択を目指すことも報告した。
慶田盛教育長は面会後の記者会見で「学校現場に問題点はない。違法ではない。まったく理解してもらえず残念だ」と述べた。
文科省は改正教科書無償措置法で採択地区の設定権を持つ県教育委員会の諸見里明県教育長を文科省に呼び、国の考えを説明するほか、県教委の方針を確認する意向を明らかにした。諸見里教育長は22日に面談する方向で調整している。
竹富町教委は地方教育行政法(地教行法)に基づき、石垣市や与那国町が採択した保守色の強い育鵬社版の中学公民教科書でなく、東京書籍版を2014年4月から使用している。
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