東京新聞
自衛隊 米の雇い兵に 纐纈(こうけつ)厚・山口大教授に聞く
2014年10月9日 朝刊
日米ガイドラインの見直しに向けた中間報告について、山口大の纐纈厚教授(政治学)に課題などを聞いた。 (聞き手・後藤孝好)
-中間報告では、平時や有事の区分がなくなった。
「自衛隊と米軍による日米軍事共同体制が、質的に強化されていくことの証しだ。これまでの周辺事態という一定の制約を取り払って、自衛隊が米軍と一緒に『地球の反対側』まで派兵される可能性が高まる。米国には、自衛隊をもっと自由に活用したいという思いがある。安倍晋三首相がそれを望んでいなくても、自衛隊が、より使い勝手のいい部隊となり、米国の雇い兵的な存在になってくるのではないか」
-区分がなくなることによる問題点は。
「切れ目がなくなれば、いつでも鉄砲を撃てる体制にしておくということで、歯止めがなくなる恐れがある。かつてコマーシャルで『二十四時間戦えますか』というのがあった。自衛隊にも二十四時間、いつでも戦闘モードに入れるような体制を強いることになる」
-集団的自衛権の行使で自衛隊の役割も変わる。
「自衛隊はこれまで、専守防衛の基本理念にのっとり、米軍の補完戦力と位置付けられ、自衛隊が『盾』、米軍が『矛』の役割だった。今後は自衛隊が主体的に『矛』として、前線に出ていくことも考えられる。米国は軍事力が台頭する中国に対抗するため、米軍ではなく自衛隊を前面に立たせる戦略を描くだろう」
-自衛隊が海外派遣で危険にさらされる懸念に現実味が出る。
「自衛隊が殺される危険より、殺す側に回ってしまう懸念も大きい。同盟関係などに基づいて、敵対関係でなかった国と戦争を強いられることを『自動参戦』という。集団的自衛権の行使は、日本が『自動参戦』の状況に追い込まれ、自分たちが望まない戦争に巻き込まれかねない」
-国会の論議よりも、日米の協議が先行している。
「集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更は、安倍政権が七月に閣議決定し、行政権の肥大化が問題となった。国会が関与しないまま、行使の結論ありきで走りだしてしまっている。ガイドラインも日米両政府が国会に先行して決めてしまうのは、民主主義の全否定に近い。物事を決めるプロセスの中に、国民が入っていくシステムである民主主義のルールを無視した状況だ」
<こうけつ・あつし> 1951年岐阜県生まれ。一橋大大学院博士課程単位取得退学。2010年から山口大副学長。著書に「日本はなぜ戦争をやめられなかったのか」など。
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