2015年2月9日月曜日

日本株の筆頭株主はGPIF、2位は日銀。日本は共産主義国家になるのか?」藤沢数希氏 / 「いまや日本は公務員が計画経済をする時代」藤沢数希氏

ハーバービジネスオンライン
2015年02月08日 政治・経済 

アベノミクスによる超金融緩和政策で、日銀は年3兆円のペースでTOPIX連動型ETFを買い、約130兆円の年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も日本株の目標ウエイトを25%に引き上げている。結果、日銀とGPIFが日本の大株主になってしまった。

日本株の筆頭株主はGPIF、第2位が日銀に。日本は共産主義国家になるのか!?(人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏)

 日本国政府が、税金で株を買い占めようとしている。アベノミクスによる超金融緩和政策で、日銀はこれまでに年1兆円のペースでTOPIX連動型のETFを買っていたが、昨年10月31日にこの買い入れペースを3倍の年3兆円にすると発表した。また、日本国民の年金である約130兆円を運用するGPIFも、同日に日本株の目標ウエイトを12%から一気に25%に引き上げると発表した。

 日本の全上場企業の時価総額は約500兆円。日本全体を一つの会社と考えれば、GPIFが断トツの筆頭株主となり、現在約25兆円を保有している。実に日本株の5%を持っていることになる。さらに目標ウエイトを25%に引き上げるので、130兆円×25%=約33兆円まで買い増していく。これは日本株の6.5%になる。

 これまでの第2位の株主は、日本最大の保険会社である日本生命の約8兆円だったが、日銀がこれを抜いたと予想される。筆者の推定によると、’15年1月末時点での日銀が持っている日本株は約8.5兆円だ。さらに年3兆円ペースで買い増していくので、年末には約11.3兆円になる。これは日本株全体の約2.3%だ。ちなみに、第4位の株主は、三菱UFJ銀行の約6兆円である。

 つまり、政府の二つの公的機関であるGPIFと日銀が、日本の会社の第1位、2位の株主となり、7%もの株を保有しているのだ。年末には10%ほどになっているだろう。公務員たちが税金でこれだけの株を買い占めている状況は、世界を見渡しても極めて異例だ。当然だが、買った株が下がれば、大きな損失が出る。それは国民の税金で支払われることになる。

 また、これだけの規模のインデックス・ファンドを保有していれば、TOPIXの銘柄入れ替えなどのイベントで、大きなマーケット・インパクトが生じるだろう。こうしたファンドは、インデックスの変更に伴い、その通りに株式を売買しないといけないので、ヘッジファンドにカモにされるのだ。


日本は公務員が計画経済をする国になるのか

 いまやGPIFや日銀は、安倍政権の内閣支持率を高めるためのオモチャにされている。株価が下がれば、これらの巨大機関が大きな買いをいれるのだ。しかし、国民の税金で株を永久に買い続けるわけにはいかない。そして何よりも株式市場というのは、民間の投資家たちが知恵を絞って売買することにより適正な値段がつくのだ。これからの国民のニーズを的確に把握し、新しいサービスを提供できる見込みの会社には高い株価がつき、資金を集めやすくなる。一方で、ダメな経営者の会社は株価が低迷し、最後には市場から締め出される。こうしたマーケットメカニズムにより、株式市場は経済成長のエンジンになっているのだ。GPIFと日銀がこうした成長エンジンをじわじわと破壊していくだろう。日本は資本主義をやめて、公務員が計画経済をする国になるのだろうか。共産革命である。

GPIFと日銀が日本株を買い増しいている。将来、どのように市場で売却するつもりなのだろうか。
(※出所:GPIFと日銀は9月末のデータからの推定。日本生命と三菱UFJ銀行は9月末の決算情報からの推定)

【今週の数字】
日銀が保有する日本の上場株式
8.5兆円

’15年1月末で、日銀は日本の上場株式を約8.5兆円保有。’15年末には11.3兆円程度まで増える見込み。約2.3%の日本株を保有し、日本生命を抜き第2位の株主だ

【藤沢数希氏】
欧米の研究機関にて博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。ブログ「金融日記」管理人。恋愛工学メルマガも発行する。cakesでは恋愛小説も連載中



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