2014年4月22日火曜日

安保をただす 自衛隊の派遣 海外で武力行使の恐れ (信濃毎日新聞) : 「首相が設置した有識者懇談会は9条の「国際紛争」を「わが国が関係する国際紛争」と解釈するよう政府に求める方向だ。例えば、イラク戦争やアフガン戦争のように日本の安全が直接関わらない場合、前線で多国籍軍を支援できるようにする狙いがある。」

信濃毎日
安保をただす 自衛隊の派遣 海外で武力行使の恐れ
04月21日(月)

 憲法上、自衛隊の海外での活動はどこまで許されるか。安倍晋三首相が目指す安全保障政策の転換で問われる点の一つだ。

 政府は憲法解釈を変えることで、集団的自衛権の行使容認だけでなく、国連平和維持活動(PKO)などへの対応も拡大しようとしている。自衛隊の武器使用基準も緩和する構えだ。いずれも海外での武力行使につながる恐れがある。

 「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。そう定める憲法9条の下、政府は自衛隊の海外での活動に歯止めをかけてきた。武器使用は正当防衛や緊急避難などに限られる。武力行使を伴う多国籍軍には参加できない。

 首相は国会で、武器使用基準の緩和のため法改正する方針を表明した。自衛隊が在外邦人の救出に向かった際、到着前に邦人がテロリストに襲われた場合を例に「今は助けることができない。それでいいのか」などと述べている。

 使用基準の緩和は昨年、在外邦人を陸上輸送できるようにする自衛隊法改正に伴い検討された経緯がある。この時は、公明党の慎重意見に配慮して見送った。

 一つ一つ小出しにしながら、活動を拡大しようとしているのではないか。基準の緩和は、PKOで他国の部隊が攻撃されたときに駆け付けて警護するといったことにもつながる可能性がある。

 首相が設置した有識者懇談会は9条の「国際紛争」を「わが国が関係する国際紛争」と解釈するよう政府に求める方向だ。例えば、イラク戦争やアフガン戦争のように日本の安全が直接関わらない場合、前線で多国籍軍を支援できるようにする狙いがある。

 政府は、自衛隊の海外派遣について「他国軍の武力行使との一体化」は憲法上、認められないとの立場を取ってきた。9条とどう折り合いを付けるか、ぎりぎりの判断を重ねてきた。懇談会が求める新たな解釈は、これまでの論議を土台から崩すものだ。

 政府がそのまま追認すれば、海外での自衛隊の活動に歯止めがなくなる可能性がある。解釈変更と言いながら、事実上の改憲だ

 政府の判断だけで踏み切ることは許されない。日本の国際貢献はどうあるべきか、自衛隊の活動を見直す必要はあるのか。そもそものところから、国民的な議論をしなくてはならない。

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