2014年3月18日火曜日

北海道新聞社説 竹富教科書選定 政府の介入することか(3月18日)

北海道新聞社説 
竹富教科書選定 政府の介入することか(3月18日)

 文部科学省は、沖縄県の竹富町教育委員会に地方自治法に基づく是正要求を出した。

 八重山地区3市町合同の地区協議会で採択したものとは異なる中学公民教科書を使っていることが、統一を定めた教科書無償措置法に違反するとみなしたからだ。

 一方で、地方教育行政法は教科書を選ぶ権限は教育委員会にあると規定している。「違法性はない」とする竹富町教委の主張には根拠がある。

 法に従っている以上、是正要求は筋が通らない。教育現場への政治介入と言わざるを得ない。

 竹富町教委は2011年以降、地区協議会が保守色の濃い育鵬社版を採択したのに対し、東京書籍版を独自に選定してきた。

 育鵬社版は沖縄県が抱える米軍基地の負担問題に関する記述が少なく、地域を考える視点が抜け落ちることへの懸念から、同町はより詳細な東京書籍版を選んだ。

 教科書選定には教育現場の理念や地域の特色、実情を反映しているかどうかの見極めが不可欠だ。

 竹富町教委の選択は教育現場のみならず、地域からも理解を得ているといっていい。

 忘れてならないのは、11年の採択当初、文科省が内閣法制局と調整して「地方公共団体が自ら教科書を購入し、生徒に無償供与することまで法令上禁止されない」との判断を下したことだ。

 当時は民主党政権下だったとはいえ、その後、法律が変わったわけではない。竹富町の動きを認めながら、一転、違法とするのでは教育行政の一貫性を欠く。

 東京書籍版は検定に合格し、実際に他の自治体でも広く使われている教科書だ。なぜ使用してはならないのか。文科省は是正要求の前にまず、その理由をきちんと説明する責任がある。

 国が都道府県を飛び越えて市町村に直接、こうした是正要求を出すのは今回が初めてという。歴代の政権が地方への政治力の行使に慎重だったことの裏返しでもあり、今回の異様さが際立つ。

 安倍晋三政権は、今国会に提出する地方教育行政法改正案で、教育委員会に対する国の関与を一層強めたい考えだ。

 政権の都合によって教育の方向性が変えられることにも危惧を抱かざるをえない。

 竹富町は新年度も同じ教科書を生徒に無償で提供する方針だ。その自主性をあくまで尊重したい。教職員や生徒に無言の圧力がかかることがあってはならない。

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