2016年9月3日土曜日

神奈川の記憶36「関東大震災と朝鮮人虐殺」 (『朝日新聞』2016-09-03) ; 朝鮮人に間違えられて殺されかかった歴史家ねずまさしの体験記

歴史家ねずまさし(1908~86)の体験記(月刊「有難」78年5月号)

 「大震災で殺されかけた僕」と題し以下の内容だ。

 旧制中学3年生だったねずは横浜・根岸の叔父の家で震災に遭遇。2日夜には「朝鮮人が攻めてくる」として自警団が結成された。
 「山」「川」と合言葉を教えられ、ねずも掘割川の坂下橋で警戒に立った。
 日付が3日に変わり間もなく、「朝鮮人が来た」という叫びが聞こえた。声のする方へと走り待ち構えたが、誰も来ない。隠れているのではと考え、岸につながれた釣り舟に飛び移り、持っていた棒で舟の縁などをつついたりした。

 「朝鮮人がいた」と岸の上から大きな声がした。ところが周囲を見渡してもそれらしい人影はない。
 すると「こいつだ、こいつだ」と刀や剣を突きつけられた。「やっちゃえ」のどなり声が大きくなり、朝
鮮人に間違われたと分かったが、「合言葉を言え」と迫られても驚きと恐怖で出てこない。「黙っているなら朝鮮人だ。殺しちゃえ」と人々はわめく。

 その時、「落ち着いてくれ。引き上げてから殺してもいい」と声があった。岸に上がると、「朝鮮人に決まっている。早いとこ、やっちまえ」の叫び。そこにねずを知る人が現れ、身元が判明。すると「なんだ日本人かよ」と人々はつまらなそうに去って行った。

 「僕は、1人の冷静な人がいたおかげで、ようやく助かった」とねずは振り返った上で、同じ学校で吃音の上級生が殺された。化学の道鎮亘先生は表札が原因で襲われそうになった - などとも紹介している。

 (略)

神奈川の記憶36 関東大震災と朝鮮人虐殺
(『朝日新聞』2016-09-03)
『朝日新聞』2016-09-03

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