朝日新聞
就学援助対象、71自治体で縮小の恐れ 横浜・富山など
高浜行人2014年6月9日22時01分
生活の苦しい家庭の小中学生に学用品などの費用を補助する「就学援助」の対象者が、全国の71自治体で縮小される可能性がある。文部科学省が9日、調査結果を発表した。対象の線引きが、昨年度から段階的に引き下げられている生活保護の基準額と連動しているためだ。
就学援助の対象者は全国で約155万人と、全公立小中学生の15・64%に上る。申請すると、給食費や体育用品など平均で年に約7万円分の援助が受けられる。
調査は4月、全国1768市区町村を対象に実施。その結果、4%の71自治体が、対象となる所得額を「生活保護基準額の1・3倍」などと連動する形で定め、かつ基準変更など対象者が減らないような対応はしていないとした。このうち県庁所在市と政令指定都市は、横浜市、相模原市、富山市、大津市の4市。
ただ、71自治体のうち10自治体は就学援助の基準について「対応を検討する」としており、今後見直される可能性もある。
基準について、引き下げ前の生活保護基準を使うなど影響が出ないようにしたのが1123自治体、生活保護基準と連動していないのは565自治体、対象者なしが9自治体だった。(高浜行人)
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就学援助の対象が縮小される可能性がある71自治体は次の通り。
【北海道】赤平市、三笠市、根室市、上砂川町、月形町、白老町、遠軽町、厚真町、羅臼町
【福島県】田村市、会津美里町、泉崎村、矢吹町、新地町、塙町
【茨城県】行方市、牛久市、河内町
【東京都】中野区
【神奈川県】横浜市、相模原市、小田原市、南足柄市、大和市、松田町、愛川町
【新潟県】出雲崎町
【富山県】富山市
【岐阜県】郡上市、川辺町
【愛知県】常滑市、美浜町
【三重県】川越町
【滋賀県】大津市
【京都府】京田辺市、京丹波町
【大阪府】泉大津市、高槻市、松原市、高石市、泉南市、寝屋川市、大東市、大阪狭山市
【兵庫県】高砂市、養父市、小野市
【奈良県】平群町、山添村
【鳥取県】智頭町
【山口県】下関市
【福岡県】飯塚市、田川市、新宮町、粕屋町、芦屋町、添田町、糸田町、大任町、川崎町、赤村
【佐賀県】上峰町、玄海町
【長崎県】佐世保市、平戸市、松浦市、佐々町
【沖縄県】宜野湾市、宮古島市、与那原町、南風原町
日経新聞
増える生活困窮家庭、子どもの貧困 見過ごすと?
2014/6/10付
「文具などを買えない子どもが増えているのよ。放っておけないわ」。ボランティアで無料学習会に協力している主婦の話に、探偵、松田章司は首をかしげた。「今の社会保障では子どもを貧困から守れないのかな。どうすればいいのだろう」
■教育で不利、自立に影響も
章司が調べると、経済的に困窮する家庭に学用品代などを補助する「就学援助制度」の支給対象者は、2012年度に小中学生の15.64%となり、調査開始以来17年連続で上昇していた。
(略)
■投資通じ「負の連鎖」断つ
(略)
国立社会保障・人口問題研究所の社会保障応用分析研究部長、阿部彩さんに聞くと「労働力人口が減る中で、貧困に陥って能力を発揮できない子どもが多ければ国の財政にもマイナスです」。
18歳の若者に職業訓練を受けさせるなど500万円ほど投資をしても、正社員として就労できた場合、定年まで働けば5千万円程度(非正規では2500万円前後)の税・社会保険料が社会に還元される。一方、放置して生活保護に陥った場合、約5千万円の費用がかかる。職業訓練による就労が成功するとは限らないものの、費用対効果は1億円近いともいえる。
海外では貧困の増加は治安の悪化や犯罪の増加につながるとして、社会的コストの試算に入れることもあるという。「米国の州別データでは貧困層が増加すると経済成長が鈍化するという結果も出ています」と阿部さん。
(以下略)
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