東京新聞
防衛大の退校・早期退職 イラク派遣前後 急増
2014年6月30日 朝刊
イラク特別措置法に基づき自衛隊がイラクへ派遣された前後の二〇〇三~〇九年に、幹部を養成する防衛大学校(防大)の退校者や、任官後の早期退職者が急増したことが分かった。ピークの〇五年は四割が退校するか、早期退職した。安倍晋三政権が集団的自衛権の行使に踏み切れば、自衛隊から再び人材が流出する恐れがある。
防大卒業者は任官後、半年の専門教育を受けて幹部の三尉(少尉)となり、以後、急速に昇進する。一般大出身の幹部もいるが、防大卒業者は一期生が一九九〇年に陸海空トップの幕僚長に就任して以降、各幕僚長職を独占。自衛隊のエリート養成校といえる。
防大の入校者は年によって四百五十~五百五十人程度。一方、(1)卒業までに辞める退校者(2)卒業時の任官拒否者(3)任官後、八月までに辞める早期退職者-の合計は毎年百人前後。入校者の約二割が防大や自衛隊から消える。
退校者や早期退職者は、米国がアフガニスタンを攻撃しインド洋への自衛隊派遣が始まった二〇〇一年に、三割近くに増加。米国がイラク戦争に踏み切り、自衛隊の派遣が決まった〇三年以降は、毎年の増加が顕著になった。
政府は〇四年一月~〇六年七月、陸上自衛隊をイラク南部のサマワに派遣。航空自衛隊は〇四年一月~〇八年十二月にクウェートに派遣された。退校者や早期退職者が急増した時期は、これらの時期と重なる。
陸自の宿営地には十三回、計二十二発のロケット弾が撃ち込まれた。空自は米兵を首都バグダッドへ空輸する際、地上から携帯ミサイルで狙われた。
帰国後、今年三月末までに陸自で二十人、空自で八人が自殺している。過酷な環境下での活動が影響した可能性は否定できない。 (編集委員・半田滋)
◆派遣明らかに影響
軍事ジャーナリスト前田哲男さんの話 明らかにイラク派遣が影響していると思う。この時期に防大に入った若者は、阪神大震災やカンボジアの国連平和維持活動(PKO)を見て人助けや国づくりに貢献しようと考えたのではないか。命の危険があるとは思っていなかったかもしれない。まして戦闘を命じる幹部の立場なので、より重い責任を感じたのだろう。一般隊員が同じような考えを持っても不思議ではなく、隊員不足となれば、徴兵制が浮上するかもしれない。
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