2014年6月25日水曜日

集団的自衛権与党協議 場当たり的議論は白紙に戻せ (愛媛新聞 社説)

愛媛新聞 社説
集団的自衛権与党協議 場当たり的議論は白紙に戻せ 
2014年06月23日(月)

 集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更をめぐる与党協議がヤマ場を迎えた。安倍晋三首相は来月初旬の閣議決定を目指し、慎重姿勢の公明党に協議加速を迫る。

 平和国家の土台を揺るがす重要な問題を密室協議で決めること自体、許されるものではない。その上、行使容認という「結論ありき」と映る現状に危機感が募る。与党内の異論を封じることに主眼を置いた場当たり的な議論は、白紙に戻すべきだ。

 新たな提案も飛び出した。自民党は、国連の集団安全保障に基づく機雷掃海活動にも自衛隊が参加できるようにするという。国際紛争停戦前の掃海が、国際法上の「武力行使」に当たることは論をまたない。そもそも国連決議による武力行使は紛争当事国への軍事的な制裁であり、自衛権の概念とは異なる。

 首相は先月の記者会見で、多国籍軍を念頭に「武力行使を目的に戦闘に参加することはない」と言明した。整合性を問いたい。掃海と戦闘を区別する国会答弁に至っては詭弁きべんと言わざるを得まい。

 粗雑な対応も目立つ。閣議決定の原案が行使容認の論拠とする1972年の政府見解は、「国民の生命や自由が根底から覆される」急迫不正の侵害に限り、必要最小限度の範囲で自衛措置を認めた。認めたのは個別的自衛権なのだが、原案は集団的自衛権も含まれるとの理屈だ。「我田引水」にもほどがある。

 一方、見解と一体であるはずの自衛権発動要件は見直された。「根底から覆される」と言えない事態に備えて「恐れがある」を加えた。曖昧と批判されると「明白な危険」にすると言いだす始末。「わが国」への武力攻撃に限る従来の要件に、「他国」を追加したのも見過ごせない。

 見解の要の部分に手を加えて別物にしておいて、論拠にしたとの強弁が通用するはずがなかろう。原案には具体的事例は盛り込まず、地理的制限も設けない方針だ。政府のさじ加減で自衛隊の活動範囲が拡大する懸念が拭えない。「限定容認」だとする政府、与党の主張は実態とかけ離れていると指摘しておきたい。

 昨年末成立した特定秘密保護法との関係にも注意が必要だ。集団的自衛権をめぐる政府判断や、同盟国との協議が特定秘密の対象になるのは想像に難くない。武器輸出三原則見直しなども含め、首相が掲げる「積極的平和主義」の安保政策を総合的に捉えてこそ実態が見えてこよう。

 共同通信世論調査では、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更に57%が反対し、先月を6ポイント以上上回った。国民一人一人が問題意識をいっそう深める必要があろう。同時に、政府には一連の安保政策の再考を強く促したい。



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