2021年5月1日土曜日

『実録KCIA 南山と呼ばれた男たち』を読む

 


本著は、映画『KCIA 南山の部長たち』の原作である。映画は、韓国国内の2020年の興行収入第1位の売り上げとなった作品で、日本では今年の1月に全国30館で公開された。横浜市の図書館でも長い待ち行列が出来ている本だけど、早い時期に予約を入れることができたので、4月中旬に読むことができた。

「まえがき」によって概要を紹介すると、、、

韓国現代史のなかでも、軍部政権の言論統制と検閲は苛酷なものであった。

特に、1961年のクーデーターにより、政権を握った朴正熙将軍以来、全斗煥、盧泰愚将軍にいたるまで、3代にわたる軍出身大統領は、南北間の軍事対立を理由に、言論に対する手綱を緩めようとしなかった。

その政権の鞭こそ、まさに「南山」と呼ばれた韓国中央情報部(KCIA)と、その後身である国家安全企画部(NSPA)だった。

(略)

東亜日報は、一九九〇年、すなわち「軍政三十年」を迎えたその年に、「南山」という聖域を暴きたいという私の企画を受け入れ、週一回の連載紙面を割いてくれた。・・・それが二年二カ月にわたって、百十二回の連載を続け・・・

(略)

南山は政治家を買収、脅迫して憲法を改正する。財閥から選挙資金を集め、有権者にばらまき、得票操作も行なう。尾行、盗聴、拷問はもちろん、金大中の拉致、朴正熙元大統領のための女色の管理、海外工作船を利用した密輸、あげくの果てに朴正熙の暗殺を犯したのも南山であった。

(略)

一九九二年十一月、一冊の本となって世の中に出された後の反応は、著者も出版社である東亜日報社も、信じられないものであった。・・・一年半の間に五十六刷、五十万部をこえる超ベストセラーとなった。

(略)

本書は、大体四つのポイントにより構成されている。

第一、KCIA部長十人(全員職業軍人上がり)が、大統領の手足となって活動した軌跡。

第二、KCIAの選挙操作および政治工作の実態、また、それが政党と政治家に与えた影響。

第三、金大中氏拉致事件および米国でのコリアゲートなど、KCIAが犯し、隠蔽してきた犯罪の内幕。

第四、一九六一年には初級将校だった全斗煥が、KCIAの課長を経て、朴正照の後任大統領になる過程。

(後略)


目次は下記。


実録KCIA - 南山と呼ばれた男たち 目次

まえがき

主な登場人物/大統領直属機構およびKCIA組織図


第1章 金鍾泌、南山に中央情報部を創設

彼らが舞台に上がった日 

早くも顔を出した全斗煥大尉 

大ピンチの李厚洛、そして逆転 

情報部法は憲法より強い 

革命のアクション・グループ「時行御史」たち 


第2章 陸士十一期生クーデターの陰謀

「一月天下」の雇われマダム張都暎参謀総長 

大平正芳 - 金鍾泌メモの真相 

南山「政治工作司令部」の与党でっちあげ工作をめぐる権力の内紛

第二代部長・金容珣、一ヵ月半で更迭 

第三代部長・金在春、金鍾泌系を追い出す 


第3章 大統領の刃と化した、金炯旭情報部

会炯旭、「南山共和国」再編に着手 

情報部の政治テロ 

尹必鏞の忠誠テロ競争 

”ピストル朴”の腕力と金炯旭情報部との対立

金大中、「情報部政治」を糾弾 

金炯旭、アンチ金鍾泌宣言

「部長好み」に歪曲される情報体系

憲法改正で大統領三選を目指せ

金鍾泌を引退させた福祉会疑惑

ピストルで脅迫、管理した米軍納入利権

金泳三に硝酸テロ

金炯旭、李厚洛、改憲の生け蟄となる


第4章 政権を揺がせた夜の名花たち

金桂元登用の謎

「金泳三を大統領候補から下ろせ」 

妖花・鄭仁淑殺害事件

大統領のセックス・スキャンダル・メモ

”大蛇”柳珍山党首の告発

乱倫、淫行をなぜ長官が報告するのか

検察・警察の捜査は芝居

愛欲のスキャンダル、名詩『五賊』を生む

鄭仁淑事件の終わりなき波紋

南山のトラブルシューター

在日実力者・鄭建永がからむ韓日三百六十五億円訴訟事件

朴大統領の女性乱脈


第5章 政治工作司令部「南山」の選挙謀略

珍山を大統領候補に立たせろ 

李厚洛情報部長、”三金”の運命を易学鑑定 

六百億ウォンの大統領選挙資金

金大中、「予備軍廃止」を公約

朴正照の「最後の出馬」というカード

尹必鏞vs金載圭、決定的反目の理由

スイス銀行秘密口座の政治資金額

日本の企業も闇献金


第6章 コードネーム”豊年事業” - 密室の維新工作

宮井洞の維新工作

牙を抜かれた金炯旭

保安司令部の拷問

朴大統領、ニクソンと田中角栄へのいらだち

米CIA、朴大統領構想に反対

「朕は国家なり」

昇りすぎた竜・李厚洛の後悔

ハナ会長・全斗煥准将の役割

尹必鏞の墜落と、ハナ会の試練


第7章 極秘指令「金大中を拉致せよ」

ホテルグランドパレスの拉致犯

「帰国指令」を拒否した金大中

金大中拉致ルート

謎の「龍金号」と船員たち

”拉致事件”か”殺害未遂”か

キッシンジャー登場、米CIA「殺害阻止」

拉致事件捜査本部の「隠蔽工作」

韓日外交、紛糾す

日本の警察、金東雲の指紋を確認

米大使、KCIAの犯行と断定

田中角栄首相の決断


第8章 申稙秀部長、維新守護のため刀を抜く

崔鍾吉教授拷問致死のミステリー

李厚洛、バハマの休養地で大統領と帰国交渉

”法律中毒”のKCIA部長

『朝日新聞』の輸入禁止

「正札制裁判」の厳罰

警察を恫喝する南山の男たち

狙われた青年たち

赤の学生らは銃殺だ

日本人記者も逮捕される

弁護人まで連行される

「悪法は守る必要ない」


第9章 「日本と断交し、東京を爆撃せよ」

朴大統領暗殺未遂事件

「東京爆撃はできないか!」 

警護室長”ピストル朴”の権勢崩壊

現代グループ総帥・鄭周水の政治力

大統領の「金庫」

「民間青瓦台」

金泳三、新民党総裁に

KCIA部長、金泳三当選に癇癪

脅迫される外務次官

「空港で金泳三を拘束せよ!」

野党議員の拷問暴露大会

維新の凶器「国家冒涜罪」


第10章 金泳三、南山の罠に陥る

マスコミへの「広告弾圧」 

金泳三、罠に落ちる 

朝鮮総連糸の韓国訪問

巧妙な野党対策

朴大統領の直轄情報隊長・李圭光

金泳三への攻撃

あやつられる野党大会

密命「北朝鮮特攻作戦」


第11章 コリアゲートと”時限爆弾”金炯旭

金炯旭が残した傷

『ワシントン・ポスト』が火をつけた

韓米間の汚職構造

韓日米を結ぶ米(コメ)ルート

狙い打ちされた朴東宣と金漢祚

情報部要員の亡命続出

南山に渦巻く密告・背信・そして内紛

駐米大使、証言封じに奔走

日本の月刊誌『創』記事の衝撃


12章 革命も維新も銃声に消える

金載圭が金鍾泌の自宅を家宅捜索

大統領の政治家嫌悪

日本の政商の予言

車智澈が国会要職人事を掌握

大統領一派に亀裂

落ち目のKCIA

金載圭が金大中を釈放する

カーター米大統領、激怒

大統領の暴言、「わしが直接デモ隊に発砲する」

金載圭、ついに大統領を射殺

躍り出た全斗煥司令官


第13章 全斗煥、南山を支配する

粉砕された南山の幹部たち

新情報部長に陸士八期の李熺性中将、就任

「鄭昇和をつぶせ」

盧泰愚司令官、表舞台へ

仝斗煥、大統領へのシナリオ

「南山」の消滅、「国家安全企画部」の誕生 


訳者からのあとがき

関連年表






映画の予告編はコチラ

0 件のコメント: