ロイター
コラム:「薬漬け」の日本経済、必要なのは雇用改革
2015年 02月 17日 12:31 Andy Mukherjee
[シンガポール 16日 ロイターBreakingviews] - 日本経済は景気後退(リセッション)から抜け出したが、雇用市場の弱さが本格的な景気回復の足かせとなっている。日銀の量的緩和は一段の円安を促し、輸出を後押しするかもしれないが、力強い内需を生み出すには正規雇用者数の増加と賃金の上昇が欠かせない。
2014年10─12月期の国内総生産(GDP)は年率換算2.2%増となり、3四半期ぶりのプラス成長となった。しかし、ロイターの事前予測(年率プラス3.7%)には届かなかった。
10─12月期のプラス成長の3分の1は輸出の伸びによるもの。対照的に、昨年4月の消費増税で落ち込んだ内需の足取りは依然として弱いままだ。日銀は昨年10月に追加緩和に踏み切ったにもかかわらず、民間設備投資は前期比プラス0.1%の伸びにとどまった。民間住宅投資は3四半期連続のマイナスとなり、消費支出の伸びは横ばいとなった。
日本経済が反発力に欠ける要因の多くは、「壊れた」労働市場にある。2012年12月に安倍晋三首相が政権の座に返り咲いて以来、非正規雇用は10%以上増えた一方、正規雇用は1%減った。
硬直した労働市場を改革できれば、非正規雇用者の職の安定が確保され、消費も喚起されるはずだ。しかし、雇用慣行への干渉を利益の圧迫要因とみなす企業側は、今後も変化に抵抗し続けるとみられる。短期的な内需のカンフル剤として、安倍政権は財政支出を拡大する必要に迫られるだろう。
GDP発表を受けて日本株は上昇した。その背景には、予想を下回る景気回復にとどまったことで、日銀にさらに大規模な緩和を求める圧力が強まったとの思惑がある。ただ、量的緩和の拡大が賃金の伸びに直結するとは考えにくい。
日本の労働者の生産性は過去20年で低くなった。非正規雇用への過度の依存は、効率向上を行き詰まらせる可能性があり、そうなれば結果的に、企業は賃上げにますます二の足を踏むようになる。今回のGDP統計が示すのは、金融政策という薬が効かなくなりつつある日本の姿だ。労働市場を「治療」しない限り、その薬の効果はすべて失われるだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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