2019年1月14日月曜日

病める貝の吐き出した美しい異物、それが真珠です。(澁澤龍彦) (鷲田清一「折々のことば」(『朝日新聞』2019-01-13)

病める貝の吐き出した美しい異物、それが真珠です。
澁澤龍彦

人生とは長患いみたいなもの。
思うようにはゆかぬその思いを、人は内に痼(しこり)りのように溜(た)め込む。
その痼りがもし、吐瀉(としゃ)物のように形の崩れたものではなく、瑕(きず)のない美しい球となって吐き出されたなら、それこそ患う人性への究極の慈悲といえるかもしれない。
幼き頃よりの夢を叶えるべく、老いて天竺に向かう親王の幻想と怪奇の旅を描いた小説『高丘親王航海記』から。

(鷲田清一「折々のことば」(『朝日新聞』2019-01-13)


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