WSJ 2014年 2月 16日 08:43 JST
韓国でサムスンの労働環境を暗に批判した映画が大ヒット
By JEYUP S. KWAAK
韓国で意外な映画が大ヒットしている。タイトルは「もう一つの約束(Another Family)」。韓国の巨大企業サムスンをほうふつとさせる企業で働く労働者が病に倒れる物語で、先週封切られた映画の中で第2位の興行収入を記録した。製作者によると、サムスンの半導体工場で働いていた娘を2007年に白血病で亡くした労働者一家の実話に基づく映画だという。
この女性の死から4年後、ソウル行政裁判所はサムスンの工場から排出された有毒化学物質が女性を含めた2人の労働者の「病気を引き起こしたか、少なくとも病気の進行を早めた」との判決を言い渡した。一方で、病気の正確な原因については科学的に証明されていないとした。他の労働者も同様の訴えを起こしたが、同裁判所は証拠がないことを理由に棄却した。
この女性の訴訟は控訴審での審理が続いている。弁護士によると、この他にも、サムスン電子の工場が関連する39件の訴えが裁判所や国営の福祉機関で検討されているという。
「もう一つの約束」は職場で使用されていた化学物質が原因で娘やその同僚が病気を発症したことを証明しようとする父親の姿を描いている。映画の中では、企業や登場人物の名前は変更されている。
製作費は宣伝費も含めて約200万ドル(2億円)。資金の約14%をクラウドファンディングという形態で調達したこともこの映画の話題となっている。同映画のプロデューサー、パク・ソンイル氏によると、100人超の個人投資家が半分以上を出資したという。
「もう一つの約束」のような映画が製作・配給されること自体、韓国では異例のことだ。大手映画会社という後ろ盾がないプロデューサーが当てにできる資金調達の手段はごく限られている。韓国の巨大複合企業は映画配給会社や映画チェーンと親密な関係にある。その結果、大手企業を否定的に扱う映画が作れないという批判の声もある。パク氏は「もう一つの約束」を上映する映画館が他の長編映画より少ないと語った。
サムスンの広報担当者は審理中の裁判と映画の内容についてのコメントは差し控えた。一方、同社が映画の製作や配給に介入しようとしたとされることについては、事実ではないと否定した。
釜山市でのプレミア上映会の後、映画の韓国語のタイトルは「Another Promise」に変更された。プロデューサーのパク氏によると、上映会のあとにタイトルを変更したのは「特定の企業を狙い撃ちにするより」正義を求める父親の姿に焦点を当てたかったからだと説明している。サムスンが使っていた有名なスローガンと同じ「Another Family」という英語のタイトルは変更されていない。
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