2013年6月29日土曜日

米国が直面する「賃金危機」:仕事の質は低下し、低賃金労働者層は増加、そして米国の賃金格差は紛れもなく恥ずべきレベルにある




ロイター
コラム:米国が直面する「賃金危機」
2013年 06月 28日 15:38

米国の勤労世帯は現在、「賃金危機」にある。仕事の質は低下し、低賃金労働者層は増加、そして米国の賃金格差は紛れもなく恥ずべきレベルにある。

皮肉にも、公正労働基準法(FLSA)が制定されてから6月25日で75周年を迎えた。現在では米国での大半の職種や労働者に適用されるこの法律が、制定当初の1938年に定めた最低賃金は時給25セント。2009年以降は時給7.25ドルにまで上昇した。

しかし、最低賃金の価値はかつてとは異なる。1960年代後半の最低賃金は平均賃金の約半分であり、最低賃金でも正規雇用者1人の年間所得で、3人世帯を養うことができた。だが、今は違う。最低賃金は平均賃金のわずか37%で、それだけでは貧困線を下回る生活を余儀なくされる。

もし最低賃金が1969年以降の物価上昇を反映していれば、現在約10.70ドルに、生産性上昇を加味していれば約18.72ドルに、最富裕層1%の賃金上昇に一致させるなら28.34ドルになる。

このように最低賃金の価値が下がる一方で、最富裕層の実質賃金は過去30年で275%増と天井知らずだ。

最低賃金の価値が低下しているだけではない。低賃金労働者の仕事の質も低下している。1979―2007年は、全体として賃金は上昇、労働時間も増加したが、最低所得者に限ってみれば、労働時間は最も増加しているにもかかわらず、賃金上昇率は最低だった。

また、労働者の平均年齢と教育水準が上がっているにもかかわらず、年間給与が3万7000ドル以上で年金や医療費も給付される「良い仕事」に就いている労働者の割合も減少した。  

2008年の金融危機と最近の不況は米国からまともな中間層の職を奪い、深刻かつ持続的な犠牲を強いている。雇用増加が見られるのは、そして今後10年で増えるだろう仕事の6割は、低賃金職だ。

米国の所得格差は先進国の中で最も大きいばかりか、多くの発展途上国のそれも上回っている。さらに悪いことに、米議会予算局(CBO)の推計によると、米国の所得格差は少なくとも2034年まで拡大し続けるという。

要するに、米国政府が基準賃金を軽視しているツケを勤労世帯が支払わされているということだ。米シンクタンクの経済政策研究所によると、過去30年にわたる最低賃金労働者と中間層との所得格差の大半が、最低賃金の実質的な減少で説明できるという。

幸いなことに、この賃金危機を解決するのは簡単だ。最低賃金を上げること。(1991年以降、時給2.13ドルという恥ずべきレベルで凍結されている)チップが収入の一部となる労働者の最低保障賃金を上げること、そして全体の賃金を物価に連動させることだ。

これらを実現すれば、労に報いて労働者の消費を増やすといった喫緊かつ重要な課題が解決されるのだ。何よりも、納税者に負担を強いることがない。

オバマ大統領は最低賃金を上げることを支持している。民主党議員らも同じ考えだ。トム・ハーキン上院議員とジョージ・ミラー下院議員が提唱する「Fair Minimum Wage Act of 2013」は、最低賃金を時給10.10ドルまで段階的に引き上げ、チップ労働者の賃金を最低賃金の70%まで保障するほか、最低賃金の価値が下がらないよう物価上昇に合わせて調整することを定めている。

この法案で最低賃金の問題全てが解決するわけではないが、かなりの埋め合わせはしてくれる。労働者3000万人に恩恵をもたらし、320億ドルを米国経済に投入し、14万人分の雇用が新たに創出される。それも財政赤字を膨らませることなしにだ。

最も不利益を被ってきた人たちが適正な賃金が得られる仕事に就くことは、強い経済を再建する重要な一歩となる。これは、世界で最も裕福な国ができる最低限のことである。

[25日 ロイター]

*筆者リチャード・L・トラムカは米労働総同盟・産別会議(AFL‐CIO)の会長。クリスティン・L・オーエンズは低賃金労働者の擁護団体「全米雇用法プロジェクト」のエグゼクティブ・ディレクター。

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