2013年10月1日火曜日

「便所の落書き」「衰退の象徴」 メディアこきおろす橋下市長の”苛立ち”と”距離感模索”

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「便所の落書き」「衰退の象徴」メディアこきおろす橋下市長の“苛立ち”と“距離感模索”
2013.10.1 07:00 

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、メディアへの反発を強めている。特にやり玉にあげられているのは毎日新聞。同紙の企画構成に「衰退の象徴」と“いちゃもん”をつけ、記事についても「便所の落書きみたい」とこき下ろす。同紙に限らずメディア全体への怒りは維新の退潮ムードが広がる中でエスカレート。大阪維新の会の候補者が落選した堺市長選での広告掲載をめぐり、朝日新聞の取材拒否を打ち出す事態に発展した。一方で大阪都構想をめぐる議論では自らの主張を伝えるような報道をメディアに依頼する一幕もあり、敵意を向けながらも政策発信のツールとして活用する「橋下流メディア戦術」を展開する。

「一記者が偉そうに」

 「毎日新聞の『記者の目』はやめたほうがいい。一記者が偉そうに。論説委員みたいに」。9月10日朝、橋下氏は市役所で記者団相手に集団的自衛権に関する質疑応答を続ける中、おもむろに毎日新聞批判を開始した。

 同日付の朝刊に掲載された「記者の目」は集団的自衛権をテーマに社会部記者が執筆し、集団的自衛権行使を「違憲」から「合憲」へとする解釈変更の考え方を疑問視する内容になっている。

 橋下氏は「論説委員が言っていることが全部正しいとは思わないが、記者の中で切磋琢磨(せっさたくま)してそれなりの人が論説委員になっている」と持ち上げながら、「論説委員でもない記者が堂々とあんなにスペースをとって論じているなんて、毎日新聞の衰退の象徴だ」とまくし立てた。

 こうした毎日新聞への強い批判は数カ月前から目立つようになった。5月に「会議中に居眠りしている」と報道され、「目をつぶりながら議論を聞いていた。会議のときは寝ない」と激怒。8月末に大阪市内で開かれた政治資金パーティーでは、こう挑発した。

 「毎日新聞はとにかく橋下憎し。便所の落書きみたい」

「橋下嫌いの幹部が広告掲載をキャンセルした」

 毎日新聞批判を繰り返す橋下氏だが、報道各社全体に対する態度も硬化。8月末の政治資金パーティーは報道陣に非公開で開催した。橋下氏は平成20年2月の大阪府知事就任後、毎年パーティーを開催しているが非公開とするのは初めてのことだった。

 発端は5月に起きた慰安婦発言騒動。橋下氏は「メディアは一文だけを切り取る。大誤報をやられた」などと述べ、国内外からの批判の原因は報道の仕方にあると主張。言葉の解釈などをめぐり報道陣と論戦となり、興奮した橋下氏が一時的に登退庁時などの「囲み取材」対応を打ち切る事態にまで発展した。

 そして維新の退潮ムードが鮮明になった9月29日投開票の堺市長選では、橋下氏は同日、朝日新聞記者の取材拒否を表明。市長選にからむ政党広告の掲載が直前に拒否されたことを理由にあげ、内部告発の情報として「橋下嫌いの幹部が強引にキャンセルしたと聞いた」と述べた。

 朝日新聞社広報部(大阪)は同日夜、コメントを発表。以前の紙面で同じ広告を掲載したことを指摘した上で、「最大の争点に焦点を当てた広告を複数回掲載することは、投票を読者に呼びかける『選挙広告』となる恐れがあり、公正・公平の観点から掲載を見合わせる判断をした」と説明した。

 だが、橋下氏は納得しない。30日に登庁した際に朝日新聞記者の質問には回答せず、不快感を示した。

 「極めて恣意(しい)的な解釈が成り立つ話だ」

都構想には「濃い報道を」

 メディアに反発する橋下氏だが、完全に突き放せない事情もある。大阪市長として改革を進める上で、メディアを通じての丁寧な説明が不可欠だからだ。

 その最たるものが橋下氏にとって一丁目一番地の公約と位置づけられる「大阪都構想」。大阪府と大阪市を再編して都に移行した場合に継続的な効果額が年間で最大976億円、初期コストが最大640億円とする案をまとめたが、効果額が当初想定した4000億円に遠く及ばないことなどから批判を招いている。

 府市や議会で作る法定協議会で案をめぐる議論が本格化。橋下氏は案で数値化されていない「二重行政解消で防げる無駄遣い」「地域経済への好影響」「力のある都による成長戦略の実現」を最大の効果と訴えるが、法定協メンバーの議員たちの間で理解は広がっていない。

 「(報道で)効果額のところじゃなくて、内容濃いやつ(記事)を見せてもらいたいですね。賛否両論は別でね」。8月下旬、都構想をめぐる厳しい情勢にいらだちを募らせる橋下氏は、記者団にこう求めた。

 橋下氏にとって、自らの“攻撃対象”であると同時に、発信力の源でもあるメディア。その付き合い方を模索する日々が続いているようだ。

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