2021年6月21日月曜日

山田清機『寿町のひとびと』(朝日新聞出版)を読む

 


横浜のドヤ街「寿町」に密着して、流転の末にこの街に流れ着いた「ひとびと」や、この街とこの街に生きる「ひとびと」を支える「ひとびと」の哀しみや喜びに満ちた人生を描いたルポルタージュ。「ひとびと」が生きた時代背景、街の遷り変りを織り交ぜて、これは読ませる本だ。

「あとがき」より

管理社会などという言葉はとうに過去のものになり、個人に関するありとあらゆるデータが収集され、分析され、頼みもしないのに最適解を送りつけられる時代に、非常識であることはいったいどんな憲味を持つだろうか。生産性もなく、時に不快で、時には危険ですらある非常識なびとびとがこの世に存在することに、意味はあるのだろうか。

少なくとも私は、寿町のひとびとから「こんな人生もありなのだ」と教えられた。社会的な評価や栄達とはまったく無縁だが、固有の、濃厚な生き方が実在することを教えられた。


▼書評など


例えば、本書「第一三話」はこの街を支えてきた「ひと」について、、、
 
寿町を語る上で欠くべからざる人物のふたり目は、横浜市寿生活館の生活相談員だった加藤彰彦である。別名、野本三吉。加藤は寿町での体験をもとに、野本三吉名で数冊のノンフィクションを世に送り出し、寿を離れた後、幾度かの変転を経て沖縄大学の学長になった人物である(現在は同大学名誉教授)。
越冬闘争の始まりと寿生活館の自主管理時代を描いた『寿生活館ノート』(田畑書店)という書名は、すでに引用文の出典として記したが、加藤はこれ以外にも『風の自叙伝-横浜・寿町の日雇労働者たち』『裸足の原始人たち-横浜・寿町の子どもたち』(いずれも『野本三吉ノンフィクション選集』所収・新宿書房刊)など、寿町を舞台にしたノンフィクションを上梓しており、『裸足の原始人たち 寿地区の子とも』(初版は田畑書店刊)で第一回日本ノンフィクション賞を受賞している。





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