YAHOOニュース
出産したらお辞めなさい」労基法違反推奨の曽野綾子論文を週刊現代が掲載した件はなぜ問題にならない?
伊藤 和子 | 弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
2013年9月3日 13時53分
週刊現代は、8月31日号に「甘ったれた女性社員たちへ~私の違和感」とする曽野綾子氏の特別寄稿を掲載した。
そのなかで、曽野氏は、驚くべき発言をしている。
見出しは「出産したらお辞めなさい」
「最近、マタニティ・ハラスメントという言葉をよく耳にするようになりました。マタハラとかセクハラとか、汚い表現ですね。妊娠・出産した女性社員に対する嫌がらせやいじめを指す言葉ですが、この問題に対し、企業側は、反対意見を言えないよう言論を封じ込められているようです。」「そもそも実際的に考えて、女性は赤ちゃんが生まれたら、それまでと同じように仕事を続けるのは無理なんです。」「ですから、女性は赤ちゃんが生まれたら、いったん退職してもらう。そして、何年か子育てをし、子どもが大きくなったら、また再就職できる道を確保すればいいんです。」「彼女たちは会社に産休制度を要求なさる。しかし、あれは会社にしてみれば、本当に迷惑千万な制度だと思いますよ。」
出典:週刊現代8月31日号
OH! これには本当に驚きました、私。
改めて説明するまでもないこと(のはず)であるが、産休制度は労働基準法65条に明記された労働者保護の根幹。労働者保護のイロハのイにあたる最低基準であり、違反した場合、労働基準法違反として、懲役・罰金刑が科される。
企業の法令順守・コンプライアンス上もイロハのイ。
そして、人間らしい生活と女性の働く権利確立のために、先達たちが勝ち取ってこられて、国際的にも当然のこととして疑問の余地なく認知されている。このような基本的人権・最低限の労働者の権利を攻撃する人がいるとは思ってもいなかった。
セクハラ、マタハラについても、セクハラは均等法で明確に禁止され、マタハラについても多くの類型が均等法違反であるというのに、「汚い表現ですね」とは何事であろう。こういう風潮が蔓延すれば、被害に会った女性の権利行使を躊躇わせることになり、職場で女性の権利侵害が横行することになりかねない。
このような発言をする曽野氏も曽野氏だし、掲載・依頼する週刊現代も大問題である。
曽野氏は私の知る限り、政府の審議会の委員などによく名前を連ねており、安倍政権の教育再生実行会議の委員などもしている。
(略)
関連記事
「出産したらおやめなさい」という「曾野発言そのものがマタハラ」と。(上野千鶴子)
曽野綾子 「甘ったれた女性社員たち」と吠える古びた論客たち 練習が終わるまで水を飲ませない野球部のような古臭い提言
0 件のコメント:
コメントを投稿