東京新聞 筆洗
2013年9月23日
雑誌「暮しの手帖」の名物編集長だった花森安治さんは「民主主義の<民>は 庶民の民だ/ぼくらの暮しを なによりも第一にする ということだ」と書き残している
▼暮らしと企業の利益がぶつかったら。答えは明快だ。「企業を倒す ということだ/ぼくらの暮しと 政府の考え方が ぶつかったら/政府を倒す ということだ/それが ほんとうの<民主主義>だ」(『灯をともす言葉』)
▼来年四月の消費税率引き上げに合わせて実施する経済対策として、政府は法人税に上乗せしている復興特別法人税を一年前倒しして、二〇一三年度末に撤廃する方針だ。所得税への上乗せは残る
▼それだけではない。安倍晋三首相は法人税の実効税率を引き下げる強い意向を示し、経済界も「働く人に恩恵がある」と大歓迎だ
▼消費税を8%に上げた時の景気後退を懸念しデフレ脱却の流れを止めたくないとしても、あからさまな企業優遇策である。与党からも「国民の理解が得られない」と反発の声が出るのは当然だろう
▼庶民から集めた税金が企業の経営支援に回る本末転倒が起きてしまう。消費税増収分は社会保障に全額を充て、財政を立て直すはずではなかったのか。一九七八年に亡くなった花森さんの言葉だ。<なんだい/取り上げたゼニの この使いぶり/いったい ぼくらのゼニを/なんとおもっているのだ>」
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