東京新聞
離島「等」本土も対象 グレーゾーン 政府拡大解釈
2014年5月28日 朝刊
政府は二十七日、武力で他国を守る集団的自衛権の行使容認などに関する与党協議で、検討を求める十五事例を示した。武力攻撃に至らない領域侵害(グレーゾーン事態)への対応では、沖縄県・尖閣諸島問題が想定されたが、政府は離島に「等」を付けて対象範囲を本土にも拡大。公明党は「聞いていない」と反発した。集団的自衛権の事例でも、政府が言う「限定容認」の範囲が拡大していく懸念がある。
十五事例の内訳はグレーゾーン三、国連平和維持活動(PKO)を含む国際協力四、集団的自衛権八。
自民、公明両党は与党協議で、政府の配布資料に基づき、予定通りグレーゾーン事態から議論。第一例が「離島等における不法行為への対処」で、事前説明では「等」がなかったことから説明を求める声が上がり、政府側出席者は「本土も含まれる」と述べた。本土の例に北海道も挙げた。
離島への対処は尖閣を念頭に、武装集団が上陸した場合の警察、海上保安庁、自衛隊の役割が想定されていたが、この日に政府が持ち出した具体例は、一九九七年に鹿児島県・下甑(しもこしき)島で起きた中国人の集団密航事件。さらに本土の要素も加わった。「尖閣は十分に対応できている」と明言した政府側出席者もいたため、公明党メンバーから「国民は尖閣問題を一番心配している」などと疑問の声が噴出。次回会合で政府側が説明し直すことになった。
グレーゾーンの問題で政府側は拡大解釈の姿勢を鮮明にした。この日は集団的自衛権に関する八事例の議論はなかったが「限定容認」の意味が焦点の一つになると予想される。
例外的に行使を認める条件としている「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある場合」の判断基準は明らかにされていない。事例のうち、邦人を輸送する米艦の防護や強制的な船舶検査は日本の「近隣」での対処を強調しているが、どこまでが近隣なのかの説明はない。機雷掃海活動への参加は、日本から離れたペルシャ湾周辺を想定し、別の地域での活動も否定していない。
<下甑(しもこしき)島の集団密航事件> 東シナ海の鹿児島県・下甑島で1997年2月、中国人20人が不法入国し、出入国管理法違反で逮捕された。島内の航空自衛隊基地の隊員30人が「野外訓練」の名目で捜索活動を実施。自衛隊の出動要件を満たさず、防衛次官が「適切さに欠ける面があった」と釈明した。政府が今回「離島等」の対処事例で挙げた武装集団には当たらない。
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