2016年10月23日日曜日

松本峻介(1912-48)《黒い花》1940昭和15 / 《N駅近く》1940昭和15 (東京国立近代美術館コレクション展) 2016-10-04

松本峻介(1912-48)《黒い花》1940昭和15

 青の印象的な作品です。
この色彩の深みはどのようにできているのでしょう?
よく見ると、白、青、緑などが、薄塗りで透明に何度も重ねられていることがわかります。
そして特徴的なのは線です。
輪郭線を描いてから、その中に色を塗るのではではありません。
色面の上に、線が引かれているのです。
これによって、線と色面との間にも、ひとつの層が形成されます。
いくつもの層の重なりが画面に深みをもたらし、それにより都会の人々の心理的な距離感も生み出さています。


《N駅近く》1940昭和15

 画面中央の人々は、半透明に重なり合うように描かれています。
とくに頭部のいくつかは複合して丸いかたまりとなって、画面のあちこちにある車輪のような形と呼応していることに気づかされます。
都会という機会の一部分として、人々が組み込まれてしまったかのようです。
松本峻介は、この作品を発表したグループ「九室会」の機関誌に、戦時下にあって個人が社会の鋳型にはめられていくことへの違和感を綴った文章を寄稿しています。


関連過去記事
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