2016年10月27日木曜日

「秋風やひとさし指は誰の墓」 「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」 (寺山修司) ; 寺山の作品を読み解くキーワードは、「コラージュ」と「虚構」である (寺山の鮮やかな手並み 松村由利子(『朝日新聞』2016-10-24短歌時評))

 秋風やひとさし指は誰の墓 寺山修司
 マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

 寺山の作品を読み解くキーワードは、「コラージュ」と「虚構」である。
「マッチ擦る・・・」は先行する富澤赤黄男(あきお)の2句をコラージュしたような歌であり、寺山には自分の俳句を歌に仕立てた作品もある。
その世界はあくまでもくっきりと描かれ、作中主体が寺山自身でないことなど何の意味も持たなかった。

 歌壇では今なお「われ」の重みが評され、虚構の是非が論じられている。
鮮やかな手並みで言葉を操り、「われ」を見せなかった寺山は、種村の言う通り「現代短歌史上最大のトリックスヌー」であり、それゆえジャンルも時代も超えて愛され続ける存在なのだ。
(歌人)

寺山の鮮やかな手並み 松村由利子(『朝日新聞』2016-10-24短歌時評)




0 件のコメント: