ロイター
消費や生産、消費増税後の回復鈍い:識者はこうみる
2014年 08月 29日 10:31
[東京 29日 ロイター] - 総務省が29日発表した7月の全世帯消費支出は、前年比5.9%減と予想の3.0%減を大きく下回った。7月鉱工業生産も小幅な上昇にとどまり、一連の経済指標からは消費増税後の反動減からの回復力の鈍さがうかがえる。
一方、7月全国消費者物価指数は前年比3.3%の上昇となり、予想と一致した。
市場関係者の見方は以下の通り。
●弱い印象、アベノミクス効果は足踏み
<松井証券 シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎氏>
弱い印象だ。7月全世帯の実質消費支出が前年比5.9%減と落ち込んだほか、7月鉱工業生産も前月比0.2%上昇にとどまり、消費増税後の回復は鈍い。失業率も若干悪化しており、アベノミクス効果が足踏みしていることがうかがえる。CPIの上昇率は高水準だが、結果的には消費を抑える要因となっており、素直に喜べない。
景況感が悪化すれば日銀の追加緩和期待が強まるが、10年債利回りが0.5%割れとなるなか、根本的にこれ以上、国債の買い入れが可能かどうか疑問だ。ETFなどリスク資産買い入れの増額などは想定されるが、金融市場を押し上げるだけで、実体経済への波及は限られるとみている。
●7─9月期リバウンドは弱め
<大和証券・チーフエコノミスト 永井靖敏氏>
朝方に発表された一連の統計を見ると、7─9月のリバウンド力は想定よりも弱い可能性がある。ただ、リバウンドすることは間違いなく、いい方向に向いているとの表現は可能だろう。
消費者物価指数は7月全国、8月東京都区部とも、ほぼ予想の範囲。今後、伸び率が鈍化したとしても、日銀の想定通り。現行の日銀金融政策に影響を与えるものではないだろう。7月鉱工業生産は弱めの内容だ。予測指数は強めに出ているが、海外の不透明要因もあり、その数値通りに実現できるか疑問がある。
一連の統計の中で、家計調査の弱さはショッキングだ。時間の経過とともに、消費増税に伴う支払い負担増を消費者が実感し始めているのではないか。財布のひもが固くなっているとみるのが自然だろう。10%への消費税率引き上げ判断で、政府は苦渋の選択を迫られるのではないか。
●回復鈍く増税ハードル高まりやすい
<SMBC日興証券 シニア債券エコノミスト 嶋津洋樹氏>
天候要因の切り分けが難しいとはいえ、消費・生産は全体的に弱い。
消費増税後の反動減からの回復が、当初想定より下振れており、10%への次回増税に向けては、政府内で慎重な見方が強まる可能性が高い。仮に増税を実施するのであれば、前回以上の対策が必要との判断が強まりやすい。前回増税時の景気対策は全体で約5兆円、真水で約3兆円だった。同規模かそれ以上の景気対策を伴わなければ景気が持たないとの声が、政府内外で広がるだろう。
コアCPIはサービス面で上昇しており、過度な落ち込みは想定しにくい。ただ、足元でエネルギー価格が軟化し、対前年比での押し上げ効果がはく落していく姿が鮮明になってきている。秋口にも1%を割り込むとの見方が市場で強まれば、日銀による追加緩和の思惑も高まりやすい。仮に追加緩和を実施するなら、タイミングとしては、次の展望レポートのタイミングが自然だろう。
鉱工業生産は、市場予想を下回った。方向感として、底入れ・持ち直しに向かう姿は見えてきている。ただ、ここ数カ月は先行きの予測指数が強くても実績が追い付いてきていない。当初想定した姿に比べ、足元の生産動向が鈍いとの感はぬぐえない。
実質消費支出も、天候要因の影響がどれほどか判断しにくいが、数字自体は非常に弱く、消費増税後の反動からの盛り返しが7月になっても見えていない。8月も天候要因が残っているため、来月発表の数字でも消費増税のハードル自体は相当上がってくるのではないか。
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