河北新報
大熊・野上1区「帰らぬ」宣言 除染見通し立たず
福島第1原発事故で全町民が避難している福島県大熊町の行政区の一つ、野上1区は3日、「高い放射線量が減る見通しがない」として「帰らない宣言」を発表した。今後、帰還を断念した町民に対する生活再建策の充実を町や国に求める。
会津若松市の仮設住宅で記者会見した野上1区の木幡仁区長(63)は「無駄な除染をするより、自然減衰を待つ方が利口だ。除染に使う費用を避難者の生活のために利用するべきだ」と訴えた。
宣言では、避難から3年がたち、家や田畑が荒れ放題で復旧が難しいと指摘。病院などのインフラ復旧のめどが立たないことも懸念している。加えて、町内に除染廃棄物の中間貯蔵施設が建設されれば、運搬車両などの通行が激しくなり、居住できる状態でなくなると主張した。木幡区長は同日、宣言文を町に提出した。
渡辺利綱町長は「町民にいろいろな考えがあるのは事実」と述べるにとどまった。
野上1区には約60世帯、200人が住んでいた。第1原発から西に約8キロの地点にあり、全域が放射線量の高い帰還困難区域。中間貯蔵施設の計画地には入っていない。
木幡区長によると、半月前、全国に避難している全世帯に帰れない宣言の案を郵送。特に異論はなかったため、行政区の総意としてまとめた。
大熊町の復興計画は、放射線量の比較的低い大川原地区に復興拠点を設け、帰還困難区域も除染を進め、徐々に帰還を進める。一方、帰還を断念した町民への支援も重要課題としている。
木幡区長は「東京電力の賠償だけでは、新天地で家を建てるなどの生活再建はできない。帰還を断念した人への町の対応は遅い。行政区として声を上げることで早い対応を促したい」と話した。
2014年07月04日金曜日
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