ウォールストリートジャーナル
【社説】インフレや円安に依存しすぎたアベノミクス
原文(英語)
2014 年 7 月 28 日 12:50
25日に発表された6月のインフレ率は年率1.2%と、5月の1.3%から減速した。これは安倍首相にとって好ましくない材料で、首相の経済再生計画が触れ込み通りに機能していないことを示している。
消費増税の影響を排除した最新のデータは、黒田日銀総裁が掲げた2%というインフレ目標から遠ざかっていることを示唆している。円安に伴う輸入物価上昇の影響は今や日本経済に浸透した。アベノミクスには具体的な経済改革を欠いているため、日本は安倍氏が首相に就任した2012年終わり以前の状態に逆戻りつつある。
それも当然だ。安倍首相が登場する前の日本の経済的苦悩の根本的な原因は金融問題ではなく、今もそれに変わりはないからだ。0.1%という超低金利だった2012年にも投資する十分な理由が見出せなかった企業を追加的な金融緩和でその気にさせることはできない。第2次安倍政権以前に日本が輸出競争力を失った主因は円高ではなかった。
円相場は貿易相手国通貨で構成される通貨バスケットに対して2012年10月以降22%下落したが、その間の実質的な輸出量――円建ての輸出額ではなく――は変わっていない。エコノミストのリック・カッツ氏によると、米国の実質的な輸入量は2007年以来15%ほど増加しているが、その間の日本の実質的な輸出量は25%ほど減少している。韓国をはじめとするライバル国が日本から市場シェアを奪っている。
安倍首相はエコノミストやコメンテーターの意見を取り入れてインフレに固執した結果、より切迫した問題への取り組みが阻まれてきた。1970年代の急激なインフレがそのまま急成長につながることはなかったことに安倍首相は気付くべきであり、成長推進策に専念していた方が得策だったはずだ。そうした成長推進課題には自由貿易(必要ならば単独でも)、労働市場の自由化、移民受け入れの拡大などがある。
ところが、輸入物価が上昇し、消費増税が実施される一方で、その他の改革が進まないことから賃金上昇につながる生産性の向上が阻害され、日本の一般世帯の購買力は損なわれた。高齢者の引退生活を支える貯蓄の実質的な価値も目減りしてきた。少なくともそうした人々にとっては、インフレ減速の可能性は朗報となろう。
単月のデータだけではトレンドを把握できず、下半期にはインフレ率が高まっていくかもしれない。しかし、安倍首相がより広範な成長推進改革を実現しなければ、それでどのような恩恵がもたらされるのかはわからない。どちらにせよ、アベノミクスの1つの構成要素である円安促進が万能薬とは程遠いということはもはや明白であり、より意義のある成長推進課題を提示する必要がある。だが、安倍首相に残された時間は少なくなっている。
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