2014年7月5日土曜日

【揺れる公募制度】消えた更迭案、教委全員「現場から外すべき」 橋下氏、留任校長は「改革者」 (47トピックス) : 更迭撤回は訴訟リスクを恐れたから      

47トピックス
【揺れる公募制度】消えた更迭案、教委全員「現場から外すべき」 橋下氏、留任校長は「改革者」

 大阪市教育委員会が3月、いったん「更迭」方針を固め、一転して留任させた民間出身の市立中の公募校長。本人と面談した教育委員全員が当初の協議で適格性に問題があるとの認識を示していたことが、共同通信が入手した発言録で分かった。背景には更迭が容易ではない制度の壁があり、校長は教員の選挙で校内人事を決める規定を変えようとした「改革者」として橋下徹市長らから突如、称賛を浴びた。

 ▽約束守って
 公募1期生だった校長は昨年4月就任後、教頭との関係がこじれ、PTAとも対立。学校運営が停滞し、前校長が校務を手伝う事態を招いた。

 橋下市長の信望が厚く、公募制度を推進する大森不二雄教育委員長ら教育委員5人は3月11日、本人や教頭と面談した上で対応を協議。「残しても何が得られるのか」「校長も教頭も両成敗だ」との指摘が相次ぎ、全員が現場から外すべきだとの認識を示した。大森氏は「辞めてもらうのは簡単ではない」と懸念しつつ、更迭を示唆して退職に追い込むよう事務局に指示した。

 その後、2度にわたる退職勧奨を校長は拒否し、逆に3年間の任期付き採用の「約束を守って」と要求。事務局は同24日の会議に校長職のまま「研修施設付」として異動させる更迭案を示した。

 だが会議で大森氏は突然、「学校正常化に校長は必要」と意見を翻す。他の複数の委員も同調、留任させて副校長を置く異例の措置が決まった。大森氏は記者会見で「更迭案のことは全く知らなかった」と主張した。

 これらの不可解な対応について委員の一人は「訴訟を起こされるリスクがあると考えた」と明かす。違法行為や明らかな不祥事には更迭の実例があるが、公募校長が「適格性を欠く」場合の対応策は未整備だった。

 市教委は来年度採用から公募校長の任期を1年ごとの更新制にする方針。ただ市議会で採用関連予算が削除され、来期も採用できるか不透明だ。

 ▽功績にすり替え
 「公募校長の大金星だ」。校長の留任決定後、出直し選で市長職に戻っていた橋下氏は胸を張った。大森氏とともに学校教育法で定められた校長の人事権を侵すとして問題視する「教員選挙」の問題を校長が掘り起こしたと絶賛し、その後、市内約460の公立校で一斉に実態調査を始めた。

 だが市教委関係者によると、校長は昨年夏の段階で既に「教員選挙」が問題だと訴えていた。その時点で大森氏らは提起に取り合わず、退職勧奨で一致した当初の協議でも「学校運営での改革志向とは別に、いろいろ問題がある」「この学校にあの校長を置いたのはわれわれの大きなミスだった」と指摘が上がった。

 教育者としての資質を棚に上げ、大々的に校長を「改革者」としてアピールする橋下氏らの姿に、市教委関係者は「教職員の力が強い学校現場を変えるため公募制度を進めたいだけ。問題のすり替えだ」と指摘する。教育委員の一人は一連の議論や経緯をこう振り返って嘆いた。「学校にいる子どものことがどこかに行ってしまっていた」

◎公募校長制度
 大阪市が橋下徹市長の主導で2013年度から始めた、市立小中学校の校長に民間人を積極採用する制度。校長の採用を、内部昇格者も含め原則公募とした条例を成立させ、初年度は11人が民間人校長に。14年度は着任予定の半数以上の35人を外部から選ぶとしていたが、不祥事が相次ぎ、応募者が激減。合格後の辞退者も続出し、12人にとどまった。大阪市では同様に目玉施策として12年8月に導入した市内24区長の公募制度でも、民間採用の区長18人のうち5人が分限免職や更迭、自主退職で辞めている。
(共同通信)
2014/07/03 18:00

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