東京新聞
明白な危険の範囲「まさに明白」 首相、不明瞭な答弁
2014年10月4日 朝刊
安倍晋三首相は三日の衆院予算委員会で、集団的自衛権を行使するかどうかの判断基準になる「新三要件」のうち「国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」の「明白な危険」の範囲に関し「明白な危険とは、まさに明白だ」と述べた。首相は集団的自衛権をはじめ政権の重要政策に関し「丁寧な説明をする」と口にするが、現実は伴っていない。首相の言葉を考察した。 (木谷孝洋)
予算委で「明白な危険」の範囲を質問した民主党の枝野幸男幹事長は「あいまいだ」と追及。だが、首相は「(要件は)結構厳しい。あいまいではない」と取り合わなかった。枝野氏は「明白な危険の範囲がどこまでか全く答えがない」と批判し、政府の判断次第で歯止めなく広がっていく恐れがあると指摘した。
首相の言葉は丁寧さが足りず、国民を説得しようという姿勢が感じられないことが多い。
安倍政権が七月に集団的自衛権の行使容認を閣議決定してから、初めて迎えた本格的な国会。当然、行使を認める必要性などが論戦の大きな焦点になる。
しかし、首相が九月二十九日に行った所信表明演説に「集団的自衛権」の文字はなかった。民主党の海江田万里代表が各党代表質問で「議論拒否の姿勢だ。国民に丁寧に説明すべきだ」と求めると、首相は「議論拒否の発想はない」と反論しながら、行使容認を反映させた関連法案に関し「膨大な作業のため、少し時間がかかる」と述べるにとどめるなど、必要性の詳しい説明はなかった。
先の訪米での国連総会一般討論演説では、持論の「積極的平和主義」について「人間を中心に据えた社会の発展に骨身を惜しまなかったわれわれが獲得した確信と、自信の、おのずからなる発展の上に立つ旗」とだけ説明。海外での自衛隊の活動拡大という重要な意味には触れなかった。
論理より感情に訴える面も目立つ。
集団的自衛権の必要性を唱えた五月の記者会見が典型例。邦人輸送中の米輸送艦を守れるようにすべきだと訴え、赤ちゃんを抱いた女性や少女の絵を掲げ「船に乗っているお母さんや多くの日本人を守ることができない」と力説した。
式辞では真意を疑われるケースもあった。
首相が八月、広島市と長崎市の平和式典で行ったあいさつは、冒頭と末尾が昨年と酷似していて「コピペ(文章の切り貼り)」と指摘された。長崎市のあいさつは、核廃絶など政府の取り組みを説明する部分まで、三日前の広島とほとんど同じ表現。長崎市民が今年、初めて聞いた言い回しは皆無に近かった。
(おわり)
「見解の相違」というのもあった。
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