産経ニュース 2014.10.25 13:40
【解答乱麻】子供が使う教科書だからこそ 衆院議員・義家弘介
今年度、文部科学省では平成28年度から使用される中学校の教科用図書(教科書)の検定が行われている。
これまでわれわれは、主に社会科の教科書に見られる一面的な記述、偏向した記述を改めるための活動をしてきた。安倍晋三政権では、民主党から政権奪還後、具体的にその作業に着手した。
下村博文文部科学相のもとで、まずは、授業や教科書作成の指針となる中学・高校の学習指導要領の「解説」の改定を行い、領土教育の充実及び、災害時の警察や自衛隊など諸機関の連携についてしっかりと記述する旨の変更を行った。そして、その上で今年1月17日、社会科の教科書の「検定基準」の見直しを行った。
具体的には「近代史において通説的な数字がない事象については、その旨を明記するとともに、児童生徒が誤解する恐れのある表現をしない」「閣議決定その他で示された政府の統一見解、最高裁判所の判例がある場合はそれに基づいた記述が行われること」などの追記だ。
この度の改定により、すべての社会科教科書が歪曲(わいきょく)自虐史観から脱却することを期待したい。
しかし、これで終わったわけではない。教科書問題というと、とかく社会科の教科書の記述ばかりが論じられるが、それ以外の教科においても到底看過できない記述が検定をすり抜けて子供たちに届けられた、という歴史が繰り返されてきた。
例えば、平成10年度から14年度まで使用された高校の教科書「国語I」(筑摩書房)には、作家の池澤夏樹氏の「狩猟民の心」を取り上げた単元があった。以下、その一部を引用する。
《日本人の(略)心性を最もよく表現している物語は何か。ぼくはそれは「桃太郎」だと思う。あれは一方的な征伐の話だ。鬼は最初から鬼と規定されているのであって、桃太郎一族に害をなしたわけではない。しかも桃太郎と一緒に行くのは友人でも同志でもなくて、黍(きび)団子というあやしげな給料で雇われた傭兵(ようへい)なのだ。更(さら)に言えば、彼らはすべて士官である桃太郎よりも劣る人間以下の兵卒として(略)、動物という限定的な身分を与えられている。彼らは鬼ケ島を攻撃し、征服し、略奪して戻る。この話には侵略戦争の思想以外のものは何もない》
わが国では思想及び良心の自由、表現の自由が保障されている。作者が作家としてどのような表現で思想を開陳しようとも、法に触れない限り自由である。しかし、おそらく伝統的な日本人なら誰もが唖然(あぜん)とするであろう一方的な思想と見解が、公教育で用いる教科書の検定を堂々と通過して、子供たちの元に届けられた、という事実に私は驚きを隠せない。
例えばこの単元を用いて、偏向した考えを持つ教師が「日本人の心性とは、どのようなものであると筆者は指摘しているか。漢字4字で書きなさい」などという問題を作成したら一体どうなるか。生徒たちは「侵略思想」と答えるしかないだろう。
歴史を超えて語り継いできたお伽噺(とぎばなし)が侵略思想の権化としてすり替わり、子供たちを巻き込んで展開されていくことなど公教育の現場ではあってはならないことだ。
教科書改善の活動はまだ道半ばである。今後も継続して取り組んでいく決意だ。
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【プロフィル】義家弘介
よしいえ・ひろゆき 高校教師を経て横浜市教育委員や文部科学政務官など歴任。「ヤンキー先生」の愛称も。
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