2012年5月3日木曜日

「熱血!会計物語 第26話 悠長ね。この電力会社は実質的に破綻してるんでしょ」(「日経ビジネスオンライン」)

東京 北の丸公園 2012-04-20
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日経ビジネスONLINE 「熱血! 会計物語」
第26話「悠長ね。この電力会社は実質的に破綻してるんでしょ」
林 總

以下、自分のためのメモ。抜粋のため、大幅に割愛、省略あり。

団達也とミミ(パリ第六大学の物理学者)の会話


「あの事故を起こした日本の電力会社が国有化されるんですって。聞き慣れないカンパニー制とかいう仕組みを導入するって」


 「6月末に開く予定の株主総会後に、市場に流通しない種類株を引き受けて資本注入を実施することで、議決権の比率を3分の2以上にするらしいね。これで、電力会社を意のままに操れることになる」


 「なぜ国有化なの。いままでは国が電力会社を監視して電気料金の引き上げや原発の安全性を厳しくチェックしてきたんでしょ。国有化するということは、チェックが働かなくなるってことよね。」


 「ボクもそう思うな。総合計画書には、国有化の狙いは、電力を適切な料金で安定的に供給することと、原発事故に関するさまざまな課題、例えば賠償、除染、廃炉などを着実に行うためと書かれている。逆から見れば、この電力会社は実質的に破綻しているから、国が代わって尻ぬぐいするということだよ。」


 「廃炉にするのにどれだけのお金がかかるかも分からないし、汚染物質が海に流れて広範囲に広がっているんでしょ。日本の漁民だけではなくて、外国から訴えられる可能性も排除できないわ。そんな損害金を日本国民の税金で弁済するってことね。それから、目先の問題として一般家庭の電力料金が10%上げられるでしょ」


 「会社側は、それなりの企業努力をして、なお料金の値上げが避けられないということなんだ。企業努力の内容を見ると、資材調達費や人件費などの削減により10年間で3兆3000億円の削減。さらに、社内カンパニー制を導入して、『火力・燃料』『送配電』『小売り』の3部門を社内カンパニーに移すとしているんだ」


 「聞き慣れない言葉だけど、カンパニー制って何なの」

「法人格はそのままにしておいて、会社の中を3つに分けて、あたかも別会社のようにキャッシュフロー責任を持たせる仕組みなんだ。こうすることで、これまでのぬるま湯につかった経営体質に活を入れようとしてるんだね。だけど、別会社として分離独立するわけではないから、甘さは残る。おそらく、将来的には、これらを別会社にして持ち株会社への移行することで、発送電の完全分離を考えているんだろうね」


 「なぜそんなに悠長なことをするのかしら。この電力会社は実質的に破綻してるんでしょ。なのにいろんなしがらみを断ち切れずに、破綻処理を先送りしているにすぎないだけよ。アメリカのGMや日本航空がやったように、まずは旧会社を法律的につぶすべきじゃないかしら。そうして借金を軽くしてから、新たに3つの会社を立ち上げればいいのに」


 「きみの言う通りだな。このまま進めたとしても、いずれ矛盾が露呈して行き詰まると思うんだ。そもそも国は電気事業法を変えようとはしていないことが根本的な問題だと、ボクは思っている。
すべてのコストを国民に負担させるというスキームを温存したいんだよ




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