2013年6月9日日曜日

安倍政権が長続きする理由(WSJ) 「私がみてきたこの44年間のなかで、野党勢力がここまで弱体化しているのは初めてだ。また、今ほど自民党に指導者が不足しているのは見たことがない」

WSJ 2013/06/08 10:09 am
安倍政権が長続きする理由

日本政治を専門とするコロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は、これまで何人もの歴代首相が1年と持たず、さしたる実績を残せずに政権を下りたのに対し、安倍晋三首相の率いる政権は数年続くと予想している。だが、日本経済の生き残りをかけた大胆な改革を実行できるかといえば、その可能性は低いとみている。

足元の金融市場に動揺が見られるにもかかわらず、安倍首相が党首の自民党は来月の参院選で勝利すると同教授は予想する。だが、それは首相の政策の効果や政治力が評価されているわけではなく、ほかに期待できそうな指導者がいない日本の暗澹(あんたん)たる政治状況を反映していると指摘した。

ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパンが6日に東京都港区のアークヒルズカフェで開いたトークセッション「WSJカフェ東京」で同教授は「安倍首相の人気が高いのは国民がその力量を認めているからでなく、今後みんなが世の中が良くなると信じたがっているためだと思う。アベノミクスが実際に効果を発揮するよう祈るような思いで見ているということだ」と述べた。

一連の景気刺激策を提案するアベノミクスによってこの4カ月間株価は上昇が続いてきたが、最近になって疑問が生じ始め、足元の金融市場は揺れ動いている。株価は急落し、円は下落幅が縮小した。5日には安倍首相の成長戦略が発表されたが、カーティス教授は期待外れの内容だったとみている。首相が強調した医薬品のオンライン販売に関する規制緩和についても、「インターネットで痛み止めを販売できるようにしたところで、日本経済がそれほど恩恵を受けるわけではない」と述べた。

カーティス教授は「この4カ月は、アベノミクスをめぐって市場は一種の根拠なき熱狂状態にあると思っていた。これからは逆に過剰な失望感が広がることになるかもしれない」と述べたが、それでも安倍政権はしばらく揺らぐことはないだろうとみている。その結果、この数年の日本には見られなかった一種の安定状況がおとずれると言う。

「私がみてきたこの44年間のなかで、野党勢力がここまで弱体化しているのは初めてだ。また、今ほど自民党に指導者が不足しているのは見たことがない」と指摘、「安倍首相を追い出したとしても、それに代わる指導者がいるだろうか?国民に期待を抱かせるような政治家がいるだろうか?応えは『ノー』だ」と述べた。

また、野党の今後の見通しについても厳しい目を向けている。12月の衆議院選挙で政権の座を失った民主党は「参院選後は消え去るか、解散するだろう」と予想、一時は高い人気を得ていた日本維新の会についても、党首の橋下徹氏が従軍慰安婦発言でアジアの近隣諸国の怒りを買い、「政治的な自殺行為」をしたことで将来の希望はそれほどないだろうと述べた。

記者:Yuka Hayashi

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