改憲論議を問う 『朝日新聞』2015-05-04
■都合の良い読み解き許されぬ 小林節
憲法改正は必要と考えています。
ただし自民党が2012年に発表した改正草案のように、国民を、しつけ直そうとするのは間違い。
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現憲法の三大原理は変えるべきではない。
人類がだとり着いた真理だからです。
憲法とは権力者を縛り、国民の権利を守る法。
国会でそのことを説明したが、質問した議員には分かってもらえなかったようです。
自民の草案には、家族の助け合いまで書いてある。
道徳をも縛ろうとする憲法観はひどすぎます。
そう言うと「専門家の傲慢」と非難されますが、過去の知識に学ぼうともしないのは、「素人の怠慢」では。
憲法学著になったころ議員の勉強会などに呼ばれました。
改憲を主張する学者は重宝だったのでしょう。
私も未熟で、「1億人を守る戦争で3千人が死ぬのは『コスト』のうち」といった乱暴な議論もしていた。
少しずつ考えが変わる、最初のきっかけは、娘が生まれたこと。
赤ん坊を抱きしめる妻を見て、ひとつの命にたくさんの人の思いがあるのを感じました。
政府がイラクやインド洋に自衛隊を派遣したのには怒りをおぼえました。
改憲もせずに「非戦闘地域」というウソの概念で戦争に参加するのは許されません。
現政権は改正の要件を緩和しようとしました。
相対多数決だけで変えるべきではなく、裏口入学に等しい。
9条は改正すべきです。
侵略戦争放棄と自衛軍保持を明記する。
ただし時の政権の思いのままに、米国の「2軍」としてたやすく海外に出してはならず、国連の正式な要請は必須です。
今後、都合のいい解釈を許さないためにも明文化すべきですが、集団的自衛権の行使を解釈変更で認めてしまった現政権に、憲法改正はゆだねられません。
(聞き手・川端俊一)
■権力が国民裏切る怖さ自覚を 谷口真由美
・・・99条が定めるように、尊重義務があるのは大臣や議員、公務員など政府の側。
国民を権力の乱用から守る「立憲主義」が意外と知られていない。
この基本理念を覆そうとしているのが、自民党の改憲案です。
国民の側に憲法の尊重のほか、「家族は互いに助け合わなければならない」などと求めています。
改憲論者の中には「現行憲法はGHQの押し付け」という見方がありますが、自民党案こそ、おばちゃん的には「オッサン政治家のホンネの押し付け」に映ります。
・・・この70年、戦争がなかったため、私たちには「国に任せれば安心」という感覚がある。
でも権力とは時に国民を裏切る怖いもの。
憲法の役割とはなにか。
自覚が必要な時代です。
(聞き手・西本秀)

0 件のコメント:
コメントを投稿