旗幟を鮮明にする 『朝日新聞』経済気象台2014-05-24
安倍晋三首相は、憲法解釈変更で集団的自衛権行使を可能にする、と意気込み、パネルを使って在外邦人救出の危機例を持ち出した。海外に拠点を広げている企業、銀行などは座視できない問題だが、法人税減税との兼ね合いか、経済界の反応は鈍い。
昨年1月、アルカイダ系の武装勢力がアルジェリアの天然ガス施設を襲撃し、建設を請け負っていた日揮社員ら日本人10人が犠牲になった。
この事件で、日揮は過激派が標的とした欧米石油資本の巻き添えになったというのが、大方の見方だったが、根はそれよりも深い。過激派は拘束した人質に「日本人か」と聞いて回っていた。理由はイラク戦争時の自衛隊のイラク派兵にある。「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地歩を進めよ)と迫った米ブッシュ政権にこたえて、小泉首相は海上補給行動から陸上自衛隊出動へと軍事支援をエスカレートさせた。以来、アラブ過激派たちは、日本を反イスラム勢力として欧米と同列視するようになったのだ。
だからこの事件は集団的自衛権の必要性の裏付けにはならず、むしろ、集団的自衛権行使で「旗職を鮮明にする」となれば交戦国と見なされ、必要最低限などという物差しは吹っ飛び、世界的規模で日本企業が敵対視される危険を実証した悲劇だ。
戦争に巻き込まれたら、経済立国という国是も崩れる。経済界は国際化で培った大局的見地から安倍首相の真意をただすべきだ。
今にも有事になりそうな安倍首相の口ぶりだが、オバマ大統領のアジア歴訪で、エアフォースワン(大統領専用機)が中国が設定した防空識別圏を堂々と通過して見せたことを、知っているのだろうか。 (昴)
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