北海道新聞 社説
閣僚の靖国参拝 自覚と責任欠いている(10/19)
閣僚としての自覚と責任感を著しく欠いた行為である。
高市早苗総務相、山谷えり子国家公安委員長、有村治子女性活躍担当相がきのう、秋の例大祭に合わせて靖国神社を参拝した。
安倍晋三首相は参拝していないが、17日に「真榊(まさかき)」と呼ばれる供物を奉納した。
11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた中国や韓国との首脳会談実現に向け、さまざまなレベルで対話努力を続けている最中である。
それに水を差すのを承知で、首相や高市氏らがあえてこうした行動をするのは、支持基盤である国内保守層への配慮からだろう。
自らの利益を優先して国益を損ねている。猛省を促したい。
高市氏は参拝後、「(中韓との)外交関係になるような性質のものではない」と述べた。
だが、中国政府は首相の真榊奉納などについて「靖国神社をめぐる日本国内のマイナスの動きに重大な関心と断固たる反対を表明する」と強く反発した。
中国や韓国との首脳会談の調整に悪影響が出た場合、どう責任を取るつもりなのか。
第2次安倍内閣では首相が春と秋の例大祭に真榊、終戦記念日に玉串料を奉納し、新藤義孝前総務相と古屋圭司前国家公安委員長が参拝することが定例化していた。
閣僚の靖国参拝には公明党が自制を求めていた。それも無視して高市氏らが参拝を強行し、首相が黙認したのは、先の内閣改造で新藤、古屋両氏が交代したことで閣僚の参拝が途絶えるのを避ける狙いもあったのではないか。
山谷氏は参拝後、「国のために尊い命をささげたみ霊に感謝の誠をささげた」と語った。
だが靖国神社は先の戦争を肯定、美化する歴史観を持ち、東京裁判のA級戦犯を合祀(ごうし)している。
政府の指導的立場にある閣僚の参拝は、侵略戦争の肯定と受け止められても仕方がない。憲法の政教分離原則にも抵触しかねない。
山谷氏は在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチ活動で知られる「在日特権を許さない市民の会(在特会)」関係者と一緒に写真を撮っていた。
参拝と合わせ、世界に誤解を与えるような言動は慎むべきだ。
今後、仮に中韓との関係改善が進んでも、首相や閣僚が靖国神社に参拝すればその度に逆戻りしてしまう。靖国参拝に代わる新たな戦没者追悼のあり方を、今こそ真剣に検討するときではないか。
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