「『南と北』とを同視野に収めて生きることに展望を持つ」と。
当時は望郷の念が強い時代だったから私は非難されました。
しかし、今も思いは変わっていません。
日本では朝鮮籍でも韓国籍でも冠婚葬祭や酒席を共にする。
本国だったらありえない。
朝鮮半島の統一はずっと先かもしれないが、在日の人たちの間では実質的な統一がなされていく。
それは朝鮮半島の未来を実践する一つの実験なんだ、と。
そう私は信じています。
詩とは、ウソのない本当のもの、美しいもの。
真、善、美を極めていく。
だから詩人は正義にもとることを容認できない。
良くないと思う方向に世の中が、雪崩を打って流れていくことを体で止められないとしても、少なくとも同調はしない。
「詩人はカナリアだ」という人もいます。
地底に降りていくときに有毒ガスなどの危険を知らせてくれるカナリア。
詩人には予知感応の力がある。
詩を書く者は生き方も必然的に問われます。
絶対的少数者の側に立つ。
それが詩を書く者の意思だと思っています。
参院選の結果を見て、生きるのも嫌だという気分になりましたが、変化を避け、なれ合いを続けよう
とする社会に分け入っていくのもやはり詩だと信じています。
金時鐘 「『在日』のはざまで」(『朝日新聞』2016-08-31時代のしるし)
「在日」のはざまで (平凡社ライブラリー)
朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ (岩波新書)
猪飼野詩集 (岩波現代文庫)
増補 なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか: 済州島四・三事件の記憶と文学 (平凡社ライブラリー)
0 件のコメント:
コメントを投稿