— ハフポスト日本版 (@HuffPostJapan) 2017年9月15日
(略)
■ 賃金が低い映画業界。20代の子がきちんと生活できる賃金を
——監督は以前インタビューの中で「起きている時間の8割は仕事している」とおっしゃっていました。「働き方改革」が叫ばれ、「ワークライフバランス」が重要視される昨今において、是枝監督は「ワーク=ライフ」といった感じがします。
そうですね。それがあまり苦にならないので。
ただ、僕はたまたま労働に喜びを感じられるような、非常に恵まれた形で仕事をしていて、お金をもらえているけれども、全ての人がそう感じられる職業に就いている訳でもない。だから、たまたま恵まれた自分が、自分の基準で、「働くって楽しい」とか「働くことと生きることがイコールであるべきだ」っていうのは傲慢だなと思っている。
——映画監督のようなクリエイティブな仕事には、「作品を作る」楽しさがあり、ワークライフバランスのあり方が違う、という一面もあるのではと思います。
クリエイティブな仕事をしているから楽しくて、そうじゃない仕事は辛いっていうのは間違っていると思っています。必ずしも「ワーク=ライフ」になるかどうかは別の話だけど、どんな職業であれ、喜びを見出すことはできるんじゃないかな。
僕がこの仕事を始めてテレビマンユニオンという会社に入った時に、音楽プロデューサーだった萩元晴彦さんに最初に言われた言葉があって。「世の中には、クリエイティブな仕事とそうでない仕事があるわけではなく、仕事をクリエイティブにこなす人間と、こなせない人間がいるだけである。それは態度の問題だ」という言葉なんだけど、それが結構強烈に残っている。
確かに、クリエイティブな態度で仕事に向き合っている人に出会うと感動しますよね。コンビニのレジの人だってそうだし、タクシーの運転手さんだってそう。
だから、僕は、働くということに喜びを見つけていくということは、あらゆる職業で可能だろうなとは思いますよ。
——「どんな仕事か」より「どんな風に仕事に向き合っているか」が、面白さややりがいを感じながら働く上では重要なんですね。
そうですね。それから僕はね、「それでメシが食える」ってすごく大事だと思っているんですよ。
——「それでメシが食える」というのは...?
「面白いんだから食えなくてもいいだろう」というのは無責任だから。この業界の現場で働いている20代の子たちって、本当に最低賃金に満たないくらい賃金が低い。それは、やっぱり何とかしないといけないなと思っているわけです。
自分がこの業界で、曲がりなりにも食ってきて50を超えた以上、少なくとも今20代の子たちが、この仕事をしてきちんと生活できる賃金を払えるような現場を提供しようと思っている。そこは、責任があると思うから。
「よかったね、仕事が楽しくて」じゃだめですよね。食えなくても才能のあるヤツはやるかっていうと、多分やらないから。僕は、食えるって大事なことだなと思っているわけです。
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