2016年9月9日金曜日

蓮舫議員は別に好きじゃないが (小田嶋隆) / 蓮舫「二重国籍」報道はグロテスクな純血主義にもとづく差別攻撃だ! さらにはガセの可能性も浮上 (リテラ) / 李信恵「蓮舫議員の国籍を『問題』にすること、それがすでに差別」 / 「国籍唯一の原則」は現実的か?――蓮舫氏の「二重国籍」問題をめぐって (韓東賢) / 蓮舫議員の二重国籍疑惑はネットデマでは? (岡口基一) / 深沢明人:蓮舫氏の二重国籍は違法じゃない / 神奈川新聞・石橋学記者「国籍を踏み絵に資質を問い、法的問題がないのに猜疑のまなざしを向ける。それをレイシズムと呼ぶ。」


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 つまり、馬脚をあらわしたのは、国籍や血統といったセンシティブな問題をネタに一人の政治家を火炙りにかけようとした人々の方で、今回の一連の騒動は、一部の日本人が、21世紀の現代に至ってなお、排外主義的な国家観ならびに民族意識を牢固として抱いていることを全世界に知らしめた事件として位置づけなければならないのではなかろうか。私はそのように考えている。

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蓮舫議員を攻撃している人たちの中には、そもそも彼女が「蓮舫」という台湾由来の名前で政治活動をしていることを攻撃している一派がいる。

「どうして『村田蓮舫』と本名を名乗らないんだ?」
「忠誠心の置き所が、留学先の北京だからじゃないのか?」
「っていうか、日本の名前を名乗るのが屈辱なのか?」

と、彼らは、「村田」という日本人姓を名乗らない蓮舫議員の愛国心を疑ってやまない。

彼らは、二重国籍を云々する以前に、蓮舫議員が、「蓮舫」と自称していることが、気に入らないのだ。

しかし、普通に考えればわかることだが、蓮舫議員が「蓮舫」という名前を押し通している理由は、タレント時代に「蓮舫」という名前で得た知名度を、政治家として利用したかったからだ。

それは、「アントニオ猪木」議員にしてもそうだし、結婚して戸籍上の苗字が変わっているにもかかわらず、旧姓で立候補し、政治活動をしている「高市早苗(戸籍名は山本早苗)」議員や、「丸川珠代(戸籍名は大塚珠代)」議員のケースでも同じことだ。

要するに、政治家は、立候補する以前の職業で得た知名度を、そのまま選挙の際の得票に結びつけるべく、よく知られている名前を変えないという、それだけの話だ。

とすれば、一部のネット民が、高市早苗議員の名前を問題視していない一方で、蓮舫議員の自称に対しては、ことさらに異議を申し立てている態度は、一貫していない。背景に民族差別的な心情が介在していることを疑われても仕方がないと思う。

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が、残念なことに、民進党の面々が、このバカないいがかりにまんまとひっかかっている。

これは、本当に残念な展開だ。

たとえば、代表選で前原誠司氏を応援する旨を表明している原口一博議員は、百田尚樹氏の

《幸せな時、たいていの人がいい人になれる。一部の人はとてもいい人になれる。
しかし、窮地に陥った時に出るのが、その人の本性。》

というツイートを引用した上で、以下のようなツイートを配信している。

《本当にそうだ。自分のルーツを確かめた。4代前まで辿るのがやっとの家系もあるが全て日本人だ。武の家系の荒々しさ。矜持。二・二六事件、特攻。農業。芸術。土と生きる人達のおとなしさと善良。海軍。キリスト者。自分に流れ込むものを知る。》(こちら)

党の同志である政治家が、その出自と血統をネタに中傷されている時に、自分の出自を持ち出して「矜持」だの何だのと血筋を誇るかのような言葉を並べているカタチだ。

本人は、このツイートのあと、色々と弁解を並べているが、こういう言い方をしてしまった以上、「自分の日本人の出自」をあえて誇ったと思われても仕方がない。

あまりにも愚かな対応だ。

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両親のうちの一方が外国籍の人間だったからという理由で、日本に生まれて日本に育ち、日本国籍を取得して国会議員にまでなった「日本人」をつかまえて、その二重国籍の疑いを、あたかも政治的な醜聞であるかの如くに騒ぎ立てるような国があるのだとしたら、たぶん、そういう国に、わざわざやって来ようと考える外国人は、そんなに多くないだろう。

政治家の善し悪しが何で決まるのか、落ち着いて考えてみるべきだ。

(文・イラスト/小田嶋 隆)





















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