1895(明治28)年
11月15日
中西悟堂、誕生。
11月17日
関如来より、作品集を出したいという一葉の願いに対して、出版関係者の交渉を続けている連絡を受ける。また、「月曜附録」への原稿の催促を受ける。
11月18日
樺山資紀初代台湾総督、台湾鎮定を大本営に報告。
日本軍:兵4万9835・軍夫2万6214投入、近衛師団長能久親王・近衛第2旅団長山根信成以下陣没4642。
抗日武装闘争は続く。
1896(明治29)年3月台湾総督府条例により軍政を解体し民政に移行(但し、1919年迄、総督が軍隊指揮権掌握)。
1898~1902年で「叛徒」1万2千を処刑・殺害。
この年末から再び起った台湾人の武装抗日運動に対し、日本軍は「各村毎に綿密に家屋を捜索し、銃器刀槍を以て抵抗するものは固より兇器を所持せしもの不穏の挙動を為す者は悉く之を銃殺し、凶器は悉皆之を破毀し其の家屋も共に焼燬」するという無差別報復討伐で応じ、運動はゲリラ化しつつ激化し、児玉源太郎第4代総督と後藤新平民政長官が強力な警察力と保甲制度を用いて抵抗者を孤立させるに及び漸く1902(明治35)年に消滅。
日本政府の台湾出兵費用は膨張し、総督府民政費への補充と合わせた「台湾諸経費」は、相次ぐ内閣交代をもたらす地租増徴問題の最大の原因ともなる。
第9議会での増税の第1理由が総額1849万円に達する「台湾及威海衛関係歳出」であり、第11議会で不成立となる地租・酒税増徴案も、根拠とされる歳入不足額の6割は「台湾諸経費」(1372万円)であり、続く第12議会で否決された増税案も1899年度に予想される歳入不足原因の筆頭に「台湾諸経費」1124万円があげられる。
台湾占領の意義:
①南進の拠点確保。
②他国による併合を阻止する防衛的占領。
③日本資本主義の販売・原材料市場確保。この年12月日本製糖設立(後年の大日本製糖を軸とする製糖帝国主義建設の第一歩。
台湾経済の大陸からの切り離し、日本資本主義経済圏への編入、日本資本の進出、の状況。
編入は貿易と金融面から開始。日本の領有前は、日本とは若干の砂糖輸出を行なう程度の関係であったが、1903(明治36)年には移輸出の47%・移輸入の50%を対日移出入が占めるようになり、日露戦後は更に高まる。
その原因としては交通通信機関整備が重視される。1896年5月、大隅・基隆間の海底電線完成とともに、大阪商船会社が総督府の補助を受け神戸・基隆間定期航路を開き、以後同社は日本郵船会社を押え、台湾関係航路を殆ど独占、1899年からは淡水・香港線などの台湾南清航路を開設し、同方面の支配者ダグラス汽船会社を駆逐。総督府からの航路助成金は年々かなりの額に達し、大阪商船はその大部分を得つつ、「運賃の高きこと条件の厳しいことは驚ろくべき計り」との批判を受けながら貨物輸送中心に高利益をあげる。台湾縦貫鉄道建設も、軍事上の必要のみならず、北部(茶業)・中部(米作)・南部(糖業)に分断されたまま大陸対岸に結びつけられていた台湾経済を統一し日本の経済圏内への編入を促進する手段として注目される(紆余曲折の後、1908(明治41)年工事完了)。
11月20日
一葉、「暗夜」改訂稿をとき宛てで大橋家へ届ける。関如来より、原稿料について、百枚ほどで「うつせみ」のときと同額くらいで日就社と交渉しているとの報告を受ける。
21日、「たけくらべ」(十一)(十二)を星野天知へ郵送。
22日、兄虎之助より援助の送金があり、礼状を送る。
23日頃、孤蝶より長文の手紙が届く。
11月22日
政府・自由党の正式提携、発表(6月頃から接触開始)。
交渉相手は自由党政務委員林有造・河野広中・松田正久。自由党は「めざまし新聞」と本部建物買取費用など1万2170円を請求(伊藤はすぐに支払い承認)。政府は、提携報酬として内閣機密費より支払い。
12月15日「めざまし新聞」は「東京新聞」と改題。政府は「東京新聞」に対して機密費より月例補助金を支払う。
一方、朝鮮問題で政府と敵対する国民協会へも3万円の資金を供与(11月29日付け伊藤巳代治書簡)。政府にとっての脅威は自由党(1万余)より国民協会(3万)。
党宣言(自由党の林・松田らの原案に伊東が筆を入れ、伊藤首相の承認を得て)公表。「我党ハ向来当路者卜其針路ヲ同クシテ進ミ之ト相提携シテ其国家ノ要務ヲ処スルニ協翼シ以テ我国ノ進運ヲ致サントス」。
11月22日
漱石、「正岡子規に送りたる句稿その七」を送る。
69句中の一つに、「愚陀仏は主人の名なり冬籠」がある。
11月27日
仏、作家デュマ(子、71)、没。
11月28日
朝鮮、春生門事件。親露・親米派が国王遷宮・金弘集内閣打倒を企図、失敗。金弘集内閣の取調べ結果、ロシアなど外国勢力があることが強調され、閔妃事件への鉾先が鈍る。
11月30日
一葉「たけくらべ」(十一)(十二)『文学界』第35号に掲載。
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