北海道新聞 社説
橋下市長釈明 責任転嫁で解決しない(5月28日)
報道や政府に責任を転嫁しても理解されまい。
従軍慰安婦問題をめぐる発言で批判を浴びた日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、日本外国特派員協会で会見し「本意と正反対に受け止められ、報道された」と釈明した。
沖縄の在日米軍に風俗業利用を勧めた発言は撤回し、米軍と米国民に謝罪した。だが「従軍慰安婦制度は必要だった」との発言は撤回も謝罪もしない姿勢だ。
発言は明らかに女性の尊厳を傷つけた。弁明の言葉を費やすよりも、率直に誤りを認め、わびるべきだ。
維新の会からはその後も元慰安婦らに追い打ちをかける発言が相次いでおり、反省はうかがえない。女性の人権を軽視する姿勢では、党としての存在が問われよう。
橋下氏は自身の発言について「戦時においては」「世界各国の軍が」女性を必要としたとの趣旨なのに、自らが「必要と考える」「容認している」と誤報された、と主張した。
「必要なのは誰だって分かる」と発言すれば「自らも必要と考える」としか受け取れまい。誤報だとの主張は苦し紛れにしか聞こえない。
戦時に軍が必要としたとの主張だとしても、戦争や軍は今も存在する。だからこそ橋下氏は在日米軍に風俗業利用を勧めたのだろう。
会見では「女性の尊厳のじゅうりんは許されない。過去の過ちを徹底して反省しなければならない」と述べた。それが真意なら「必要だった」との発言にはならなかったはずだ。
質疑でも、慰安婦制度の強制性を認めた河野洋平官房長官談話があいまいだと問題点をすり替え、政府を批判した。国家の意思だったか証明されていないとの主張に寄りかかっていては、反省は伝わらない。
維新の会では西村真悟衆院議員が「韓国人がいたら『おまえ、慰安婦やろ』と言ってやったらいい」などと発言し、党を除名された。平沼赳夫代表代行も「慰安婦は『戦地売春婦』だと思う」と述べた。
さらに中山成彬元文部科学相は、橋下氏との面会を拒んだ元慰安婦に「化けの皮が剥がれるところだったのに残念」とツイッターで発言した。
面会できない環境をつくったのは橋下氏の発言だ。橋下氏をいさめるどころか、女性を蔑視する政治家の集団となっている。
安倍晋三首相も責任を感じるべきだ。橋下氏の発言に対し「立場が異なる」と人ごとのような態度だが、首相が河野談話を見直そうとしたことに端を発している。
日本の国際的な信用を守るため、戦争中の行為についてしっかりした反省の上に立って政治を進める姿勢を内外に示すべきだ。
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