江戸城(皇居)二の丸雑木林
*明治37年(1904)
11月26日
・第3回旅順総攻撃
午前8時、砲撃開始。午後1時、総攻撃。正面攻撃失敗。決死隊「白襷隊」3千余進撃。大半死傷。
第1師団(松村務本中将):
第2旅団第2連隊(渡辺祺十郎大佐)(松樹山攻撃隊)。
第1大隊(馬場鉾之助少佐)を突撃隊にして、第1・2突撃隊が突撃するが大半が死傷。退却。
午後5時30分、第3大隊が第2次突撃、失敗、退却。
第9師団:
二龍山堡塁に向った右翼左の第18旅団(平佐良蔵少将)第36連隊第1大隊(田中貫一少佐)、第1中隊1個小隊を突進させるが、殆どが死傷。田中大隊長は退却下命。
右翼中央の第19連隊(服部直彦中佐)第1大隊が突撃するが死傷者続出。うち第4中隊は十数人が敵塁に突入するが、全滅。予備隊第2大隊が増派されるが、ロシア側の抵抗強靭で両大隊併せて70に減少。
盤龍山第1砲台に向った左翼の第6旅団(一戸兵衛少将)第7連隊は第2大隊第5中隊・第3大隊第11中隊が突撃し、ほぼ全滅。両大隊より4中隊を増派するも、敵砲台の囲壁に到達する者なし。
盤龍山望台に向った左翼の第6旅団第35連隊(佐藤兼毅中佐)第1大隊(峰田俊少佐)が突撃、第3中隊半数と第4中隊数十人が囲壁に到達するが、やがて全員死傷。峰田少佐負傷。第2大隊2中隊が続くが、過半を失う。
第6旅団一戸少将は第35連隊に攻撃中止命令。
午後3時30分、右翼第19・36連隊が攻撃再開。第36連隊第3大隊長原田清次郎少佐戦死。第19連隊長服部中佐負傷。
第11師団(土屋光春中将):
①第22旅団(前田隆礼少将)第43連隊(西山保之大佐)は第1大隊(渡辺小太郎少佐)から突撃隊を選抜し望台東斜面に向う。選抜隊は大半を損失、続く第4中隊一部が囲壁に辿りつく。続く第1・2中隊は到達できず。連隊長西山大佐負傷。
②第10旅団(山中信義少将)第22連隊(青木助次郎大佐)は東鶏冠山北堡塁に向う。正面攻撃の第1大隊4中隊はいずれも死傷。続く第3大隊(佐々木栄次郎少佐)第11中隊は陣地を出て20m地点で全滅。第1大隊長福地守太郎少佐・第2大隊長厚東秀吉大尉戦死、第3大隊長佐々木少佐負傷。
③第10旅団第44連隊(石原大佐)は東鶏冠山第2堡塁に向う。第1大隊3中隊が突撃するが前進中断。
④第22旅団第12連隊(新山良知大佐)は東鶏冠山に向う。第3大隊(志岐守治少佐)は第1~4突撃隊を編成。第1突撃隊第10中隊長代理橋本鹿之助中尉が敵散兵壕に単身突入、中隊および第2突撃隊第9中隊が続き、散兵壕を奪取。ロシア兵は三方から散兵壕に迫る。志岐大隊長・第11中隊長北原信次大尉・第9中隊長村田利行大尉・第12中隊長筑士大尉負傷。午後3時過ぎ、ロシア軍の逆襲。午後4時10分、突撃陣地の確保も危うくなり、散兵壕より退却。第12連隊はほぼ全滅状況(第2大隊:死傷313・残兵137、第3大隊:死傷372・残兵49)。
午後5時、乃木大将、「白襷隊」に松樹山4砲台付近の敵塁占領下命(敵をひきつけ来援を待て)。
午後8時50分、第1師団特別連隊2大隊が突撃、先頭は散兵壕に飛び込む。そこには地雷炸裂と手榴弾「雨注」。
次に、第11師団第12連隊第1大隊が続くが散兵壕に至らず、大隊長児玉象一郎少佐ら死傷。
午後9時30分、第25連隊第2大隊が散兵壕に向うが、先発した第35連隊第2大隊が退却してきて、突撃の状況にはない。
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11月26日
・ロシア・バルチック艦隊、フランス領ガボンのリーブビル港外20カイリの領海外に到着。現地のフランス知事は、同港で載炭せず70カイリ離れたロペス湾での作業を要請。
載炭後、12月1日、ガボン発。
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11月27日
・午前2時、「白襷隊」を含む全攻撃部隊から、第1目標すら攻略できないで突撃中止の報告。
午前10時、第3軍司令官乃木大将、「正面攻撃中止、203高地攻撃」下命。
午前10時30分、203高地砲撃開始。
午後6時、第1師団(松村中将)第1旅団(馬場命英少将)第1連隊が203高地東北部(第3大隊)と老虎溝山(第1大隊)攻撃。
午後6時50分、第1大隊が老虎溝山西部山頂堡塁に突入。
午後7時40分、第1師団後備第1旅団(友安治延少将)後備第15連隊が203高地西南部に突撃。難渋。
午後10時、老虎溝山にロシア軍の逆襲。第1旅団の突撃隊は第1線散兵壕に後退。
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11月27日
・週刊『平民新聞』第55号発行。
社説「社会党の鎮圧」で政府の社会主義運動取締を論難糾弾。
実際この頃、「政府の迫害が一段と苛察陰険を増し」ていた。
「巡査や探偵はいたるところの売捌店について『平民新聞』購読者の住所氏名を調べ、その家を訪うて威嚇妨害をこころみ、あるいは社会主義を信ずる青年の父兄に迫って干渉を加え、あるいは露探非国民の悪声を放って郷党の偏見を煽動して憚からなかった。小田、山口の伝道行商に関しても、陸軍次官石本新六の名で「近ごろ平民新聞社員と称する小田某、山口某なる者、社会主義を鼓吹するため地方を遊説して不穏の言論をなせる由、右は非常の害毒を流すべきものにつき軍人家族、ならびに遺族に面会することを厳禁すべし、なお二人は目下、豊橋地方にある如し」という親展書が各地官憲に発せられている。」(荒畑『平民社時代』)
堺利彦が「平民日記」で、「安部磯雄君は此頃、其全力を注いでマルクスの『資本論』の翻訳に従事して居るので、暫く実際運動に遠ざかるかも知れぬとの事。今、日本に於て此翻訳に成功し得る者、恐らくは氏を措いて外に一人もあるまい」と記す。
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11月27日
・ロシア・バルチック艦隊独立支隊、スエズ運河通航、紅海南下。
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11月27日
・(露暦10/14)露、獄死した学生マルイシェフ葬送デモ。
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11月28日
・夜明け、203高地への砲撃。
午前8時10分、後備第1旅団後備第15連隊(香月中佐)第1・2大隊が203高地西南部に突進。
午前10時30分、援軍を得て再突入。203高地頂上占領。ロシア軍の逆襲により山頂の兵士は全て死傷、山頂へ進む兵士は退却。
正午、備第15連隊は三度突進、203高地西南部一部奪回。東北部に向う第1連隊は連隊長田中中佐負傷し突撃態勢とれず。
午後1時40分、第1旅団(馬場命英少将)第1連隊長代理枝吉歌麿大佐が203高地東北部に突撃するが、先頭は40m進んだ地点で全滅。
午後4時、総攻撃(西南部を後備第15連隊が、東北部を第1連隊が)。足並み乱れ、西南部への突撃のみ。西南部山頂の一部と第2線散兵壕の維持に留まる。
午後4時30分、東北部への攻撃。一旦山頂一部を奪取するが、逆襲により中腹散兵壕に退却。第15連隊は老虎溝山に向かい、一旦山頂堡塁を占領するも、退却。
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11月28日
・西川光二郎、足尾金田座講演会。聴衆1千余。長岡鶴造(労働同志会組織運動)の招き。
29日、足尾いろは座で演説会。
「西川はまた十一月二十八日、足尾銅山に労働同志会を作る運動をしている永岡鶴造の請を容れて、松崎源吉とともに遊説におもむいた。足尾では前夜、反対派の秘密会合で不穏の計画が議せられた風聞があり、同志会の演説会広告が被られた事実もあって、二十余名の坑夫が西川等を護衛して演説会場の金田座に乗込んだほどである。会は聴衆一千余を超ゆる盛会で、松崎の演説中、一人の壮士が演壇に登って妨害したため聴衆から袋叩きに会ったほかは、予想された騒動もなく終了した。二十九日の夜は本山のいろは座に演説会を開き、前夜と同じく満場立錐の余地もない盛況を呈した。ここでも一人の妨害者が現われ、怒った聴衆のなかから刃物を持って反対者に近づかんとする者まで出て、スンデのことに大事に至らんとする騒ぎであった。」
(荒畑寒村『平民社時代』)
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11月28日
・第21議会召集。30日開会、1905年2月27日閉会。
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11月29日
・午前0時30分、ロシア軍の逆襲。203高地西南部一部占領の後備第15連隊香月中佐部隊の第1線は全滅、第2散兵壕の維持がぜいぜい。東北部中腹の第1連隊は連隊長代理枝吉少佐が戦死。
午前2時、第1師団長松村少将は203高地・老虎溝山攻撃失敗を報告。
乃木大将は、第7師団(大迫尚敏中将)に第1・7師団を指揮させて203高地攻略を決める。
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11月29日
・午後8時、満州軍参謀総長児玉大将、「第三軍司令官に代わり指揮可」との大山元帥の一札持ち烟台の総司令部を出発。
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11月30日
・乃木大将次男保典少尉、戦死。
乃木希典の第二子、陸軍少尉保典(やすすけ)は、203高地の攻撃軍の右翼隊長なる友安少将の副官をしていたが、この日、第一線への命令を伝えるために山の斜面の塹壕を進む途中で戦死した。
この夜、乃木の第3軍第1師団と、補充部隊として到着した第7師団の混成軍なる攻撃隊が203高地を占領した。乃木は戦線後方の高崎山にある第1師団司令部でそれを見届け、その旨を内地の大本営に打電させてから、日暮がたに馬に乗り、伝騎を先に立てて一人で3里ほど離れた第3軍司令部の宿舎に帰った。
途中、一人の兵卒が、すでに死んだ将校を背負い、野戦病院への道を乃木に尋ねた。夕闇の中で人の姿がおぼろに見えるときであった。兵卒はその死骸が乃木保典少尉であることを説明したが、乃木は病院の方角を指示したのみで通り過ぎた。
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11月30日
・午前6時、満州軍総参謀長児玉大将、遼陽発。
午前10時、第1・7師団による203高地・老虎溝山攻撃開始。
夜襲により、203高地西南・東北部に進出。西南部では第26連隊第2大隊長静田一郎少佐・後備第15連隊第1大隊長林昭正少佐ら負傷。東北部では第7師団第28連隊第10中隊と第27連隊第11中隊が山頂に到達。
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11月30日
・政府、一般経費を削減して軍事費を歳出の35.5%とする1995年度予算案を衆議院に提出。
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