茨城新聞 2014年9月1日(月)
【論説】普天間飛行場移設 沖縄を分断するのか
自民党が11月16日に投開票される沖縄県知事選で3選を目指す仲井真弘多(なかいまひろかず)知事の推薦を決めた。
仲井真氏は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に賛成の立場。移設に反対する元自民党県連幹事長の翁長雄志那覇市長も出馬の意向を表明しており、保守の分裂を伴って辺野古移設の是非が最大の争点になる。
翁長氏の動きから選挙戦が辺野古移設賛成派と反対派による激突となることを予想した政府は、今月中旬、辺野古沿岸部の埋め立て工事に向け、海底ボーリング調査を始めた。
投開票までに、後戻りできないところまで工事を進めることで反対派を切り崩して争点化を回避する狙いとみられる。しかし、それは既成事実化によって辺野古移設を無理やり、受け入れさせようとする強引な手法であり、許されることではない。
自民党の推薦を受けた後、仲井真氏は「着々と計画を進めるのは当然だ」と政府に歩調を合わせたのに対して翁長氏は強く批判した。このままでは、投開票後、賛成派と反対派の間に深刻な亀裂を残しかねない。静かな環境の中で冷静に判断してもらうため少なくとも投開票までは作業を中止すべきだろう。
自民党が、仲井真氏の推薦を決めるまでは曲折があった。沖縄県連は約1カ月前に擁立を決めていたが、党本部に「勝てるとは限らない」と慎重論があったため手続きが遅れた経緯がある。自民党が、少なくとも辺野古移設推進が沖縄県民の総意ではないと分かっていた証拠だ。
しかし、辺野古移設を何としても進めたい自民党と政府が取った手は、移設反対という民意をねじ伏せようとするものだった。今月中旬になって、辺野古沿岸部への代替施設受け入れに反対する人々が抗議活動を繰り広げる中で、埋め立て工事に向けた海底ボーリング調査に着手したのだ。
これは普天間飛行場の代替施設建設に向けた本格的な作業で、設置された台船を足場にして海底掘削を開始、埋め立て地盤の強度や地質を調べることになる。
11月30日までに、米軍や工事用船舶以外の航行を禁止する臨時制限区域の海底16カ所と陸上の5カ所を掘削調査。調査結果を基に埋め立て工事を設計する。
実は、政府は2004年にも辺野古沖の移設計画でボーリング調査に着手したが、臨時制限区域はなく、反対派による船やカヌーでの激しい抗議活動を受け翌年、中止に追い込まれている。このため今回は区域を設定し、抗議活動阻止を図っている。
辺野古移設をめぐっては仲井真氏の埋め立て承認後、やはり移設の是非が争点となった今年1月の名護市長選で、自民党の推す候補が、移設反対の現職の稲嶺進氏に敗れており、知事選でも敗北すれば移設に影響するのは確実。政府、自民党は必死だ。
しかし、そもそも普天間飛行場の移設は沖縄県の基地負担の軽減から始まった話だ。それが、いつの間にか、「基地と負担の移設」にすり替わってしまったところに問題の根幹がある。
日米合意にとらわれるあまり、沖縄県民に辺野古移設をめぐる「民意の分断」という新たな負担を強いることがあってはならない。
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