『朝日新聞』2015-08-14
1944年10月、フィリピンをめぐる米軍との戦いの最中に13人で始まった特攻作戦。
死を前提とした作戦は、敵軍を撃沈させた戦果から、沖縄戦と本土決戦の中心戦法になり、4500人超の犠牲者を生む。
8日に放送されたNHKスペシャル「特攻~なぜ拡大したのか」では、元特攻兵や彼らを支援した元航空隊幹部らの証言、軍上層部の肉声テープをもとに、特攻が急速にひろがった背景を伝えた。
特攻隊の多くは、実戦経験のない20歳前後の若者たち。
生きて帰ることを望んではならない状況下で、元特攻兵は「なぜ死ななきゃならんのだろう。私が敵艦にぶつかって沈めた場合、日本は勝利するのだろうか」と疑念があったと話す。
時に狂気と語られる特攻だが、命令を受けながらも、当事者は冷静に現実を見ていたと思うとやりきれない。
新たに見つかった機密資料は、軍上層部が行った、実際の撃墜数を上回る過大報告や、特攻を政治工作にも利用していたことを明らかにした。
戦況が悪化しても上層部は特攻に頼り、戦争継続を貫く。
和平派はいたが、主戦派が支配する場の空気によって特攻は推進された。
本土での特攻作戦は終戦で発動しなかったことに唯一の救いを見いだしつつ、戦争の愚かさと非人道的なむごさを改めて思い知った。
(松沢奈々子)
0 件のコメント:
コメントを投稿