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漁業者、遠のく復興「また風評被害広がるのか」
2013.8.23 13:08
昨年6月にようやく試験操業にこぎつけた福島県沖の漁業が、当面中断されることになった。「また風評被害が広がるのか」「漁師を辞める覚悟だ」。復興にかける期待が大きかっただけに福島の漁師らの失望感は大きい。
「秋はうまいアナゴにスズキ、カレイ、ヒラメも取れるのになあ」。相馬双葉漁協の組合員、柴野隆さん(52)は試験操業の中断決定に肩を落とした。試験操業が認められた昨年6月以降、魚の放射線量の調査のため、月に2度船を出してきた。知人から「魚も取れないのに、何で漁師を続けるのか」と聞かれたこともあるが、「少しでも前に進むために」と続けてきた。
「再開したと思えば、また中断。こんなことが続けば、誰も先に進めない。新しい船を作る人もいなくなる。来年3月で震災から3年なのに。何年こんな状態が続くのか」と嘆く。
福島県水産課によると、県内では昨年6月以降、調査の結果、影響が少ないと判明したカレイやミズダコなど16魚種に限り、全国の市場に出荷してきた。ただ、多くは県内のみで消費されているのが実情だ。
いわき市久之浜の漁師、八百板(やおいた)正平さん(79)は「1年前ぐらいから築地市場での風評も良くなってきていたのに。これでまた悪くなるんだろうか」と風評被害の拡大を懸念する。取った魚は出荷せず、検査後に自分で食べるだけ。「もう年だし、自分には漁師を辞める覚悟はある。ただ、息子など後継者がいる家は大変だ」と述べた。
福島の漁師を取り巻く環境は厳しい。NPO法人「いわき自立生活センター」の長谷川秀雄理事長(59)によると、原発事故後は漁に出られず、酒浸りになり、体調を崩す漁師も出た。長谷川さんは「賠償や海のがれき撤去の仕事などで生活はできるが、『うまい魚を取ってなんぼ』という漁師のプライドがくじかれた格好。ようやく操業が再開し、復興への光が見えた矢先だったのに」と悪影響を懸念する。
福島の支援を続ける人からも心配の声が出ている。
南相馬市などで住民の内部被曝(ひばく)の検査を続ける坪倉正治医師(31)は「漁業関係者は魚のセシウム含有量を1種類ずつ調べ、少しずつ水揚げ量を増やしていこうとしていたときだけにショックだろう」とおもんばかった。
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