室井佑月 「こんな切ないこと、子供にいわせるんじゃねぇ」〈週刊朝日〉
dot. 8月30日(金)7時12分配信
漏れつづける福島第一原発の汚染水。夏休み、沖縄旅行へ行った作家の室井佑月氏は、中学生の息子とこんな話をしたという。
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夏は海っしょっ!
去年は息子の中学受験で旅行に行けなかったもんだから、今年は沖縄へ行って遊びまくってきた。シュノーケリング、ダイビング、パラセーリング、ジェットスキー。日没を眺めながら飲む酒も美味い。美味いんだけど……。
夕方になると、息子とともにどちらからともなく、福島第一原発の話となった。
報道によると、毎日700トンの汚染水が発生し、うち300トンは海に流れ、400トンはタンクなどに保管しているとか。毎日、700トンの汚染水ってどんなよ? 想像もつかない。
壊れた原発は冷やさなきゃいけないと、とにかく水をぶっかけた。すると、汚染水が出てきてしまうので、水が循環するシステムを造るといっていた。でも、上手くいかなかった。さらに地下水も流入して、汚染水は増えつづける。
そこで、汚染水から62種類の放射性物質を除去できる、新装置「アルプス」なるものが登場した。しかし、試運転中にタンクから水漏れした。ま、それからも汚染水の問題が日々深刻になっているのだから、それも上手くいかなかったのね。で、この先は、地下水の流入防止策として地盤を凍らせる「凍土遮水壁」しかない!みたいにいわれている。建屋周囲の地下の土を凍らせ壁を造るんだとか。
今度こそ、大丈夫か? 心から期待したいところだけど、永遠にあんな広い敷地を膨大な電気を使って凍らせつづけるというのか、それはそれでため息が出てくる。
安倍首相は8月7日、首相官邸で開かれた原子力災害対策本部会議で、「東京電力に任せるのではなく、国としてしっかり対策を講じていく」と発言したらしいが、なぜ今なんだろ。すべて楽観視して物事の後手後手にまわってきた東電のやり方を知っていて、どうして今まで知らんぷりしていた? 知らなかったといっても問題だしな。国として現場に金を出すだけじゃ駄目なんだ。それはリーダーシップじゃない。
そもそも、その金はうちらから取り上げた税金で、うちらは一日も早い事故の収束を願い、その思いを税金に託している。だから、うちらには決してできないこと、国の役割は、首相が頭を下げ、世界の英知を集めてくるようなことなんだと思うが、違うか?
それと、この事故に関与した者たち、当時の東電幹部や政府関係者や、嘘の情報を流した学者たちや情報隠しをした官僚たちに、国は責任を取らせるべきだ。未だ、検察や警察が東電に強制捜査にも入っていないっておかしい。こんなに多くの被害者がいるのに。
「俺が大人になるころ海水浴は、贅沢な一部の人の遊びになっているかも。……あ、今もそうか。××くん(福島に住む、息子の幼稚園時代の友達)、今年、海に行ったかな」
こんな切ないこと、子供にいわせるんじゃねぇ。
※週刊朝日 2013年9月6日号
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