社説
TPP交渉 年内妥結ありきは論外(8月24日)
日本が初めて本格参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉がブルネイで始まり、きのうの閣僚会合で年内妥結に向け努力するとの共同声明をまとめた。
来年秋の中間選挙をにらみ、実績作りを急ぎたい米国のオバマ政権の意向を反映したとみられる。
しかし日本は、7月のマレーシア会合の後半から交渉に合流したばかりだ。年内決着にこだわるなら、十分な交渉時間を確保できないのは明らかだ。
日本は農産5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)の関税死守が前提だ。
輸出倍増計画を掲げ、市場開放への圧力を強める米国のペースにはまり、安易に妥協することは断じて認められない。
TPP交渉の冒頭に閣僚会合が開かれるのは異例だ。開催を求めたのは米国であり、通常、開催国が担う議長も米通商代表部(USTR)のフロマン代表が務めた。
声明には10月にインドネシアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、TPP首脳会合を開くことを明記した。
同会合でおおまかな合意を目指すというが、関税や知的財産、環境など7分野の交渉が難航しており、マレーシアは国内企業の優遇見直しに反対を表明した。「年内妥結」は困難との見方が大勢だ。
問題は日本の対応だ。TPP会合前に来日したフロマン氏が「年内妥結」を繰り返し訴えたのに対し、甘利明TPP担当相らは協力を約束した。対米追従の姿勢で「強い交渉力」を発揮できるのか極めて疑問だ。
米国主導の交渉を警戒し、日本に米国への対抗軸を期待する東南アジアの参加国にも失望感が広がる。
特に先行きが懸念されるのは関税協議だ。他分野と異なり2国間交渉を積み上げていく方式を取るが、日本がメキシコなどに示した関税撤廃案は、農産5品目について態度を明らかにしない「未定」とした。
これでは関税撤廃を拒めたとしても、関税引き下げなどの一定の譲歩を迫られかねない。
甘利氏は閣僚会合で漁業補助金の削減反対を表明した。であるなら5品目の関税維持についても、明確に意思表示すべきだ。
TPP交渉は参加国が秘密保持契約を結んでいることを理由に、具体的な協議内容は定かでない。
自民党内にも「情報がない中では議論ができない」との不満が高まっている。産業や暮らしに大きな影響を与える協定を、政府の一部で決めていいはずがない。
閉鎖的で拙速な交渉で、日本の国益が守れるのか強く懸念される。
TPP閣僚会合は「年内妥結」をうたった共同声明を発表した。「年内妥結」は米国が主導し、日本政府はそれに追随した。本気で「守るべきものを守る」なら、なぜ「年内妥結」か。「守秘義務」で日本国民の目と耳をふさいだまま、日本を米国に丸ごと売り渡す協定の妥結など絶対に許せない。
— 志位和夫 (@shiikazuo) August 23, 2013
自らISD条項を要求…。言葉を失う。「日本は企業の海外進出を促すため、進出先での急な制度変更などで損害を被った場合、企業が国際的な仲裁機関に訴えることができる仕組みの導入を求めていく」|8/24NHK:TPP 紛争仲裁の仕組み要求へ http://t.co/w8j8c0HCHX
— perspective (@prspctv) August 25, 2013
NHK
TPP 紛争仲裁の仕組み要求へ
8月24日 1時54分
TPP 紛争仲裁の仕組み要求へ
ブルネイで開かれているTPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉会合で、日本は企業の海外進出を促すため、進出先での急な制度変更などで損害を被った場合、企業が国際的な仲裁機関に訴えることができる仕組みの導入を求めていくことにしています。
TPPの交渉会合は、23日で閣僚会合が終わりましたが、並行して行われていた事務レベルの作業部会では今月31日まで交渉が続けられ、このうち24日からは「投資」の部会が始まります。
日本は初めて参加するこの部会で外国に進出した企業がその国の急な制度変更などで損害を被った場合、国際的な仲裁機関に訴えることができる仕組みを導入するよう求めていくことにしています。
新興国の中には国の制度が頻繁に変わり、進出した企業の負担になっている例があるため、政府としてはこうした仕組みを整えることで企業の進出を促したいとしています。
ただ、参加国のうち、オーストラリアが導入に反対しているとみられるほか、国内でも海外企業からの訴えが乱発するのではないかという懸念も出ています。
このため、政府は国民の生活に関わる安全や環境の制度変更に対する訴えを制限するなど、訴訟の乱発を防ぐための措置を設けたうえで導入することを目指しています。
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