ゲンダイネット
出席の有識者が暴露 「消費税ヒヤリング」のフザけた実態
2013年8月31日 掲載
やはり壮大なガス抜きに終わった
<1人の持ち時間は8分、政府からの質問なし>
消費増税の是非を有識者に聞く、安倍政権の「集中点検会合」が31日に終了。6日間ぶっ通しで総勢60人から意見を聞いたが、大半は「増税やむなし」。反対派の声は数えるほどだ。人選を任された甘利経財相は「職業・年齢・増税の考え方について、バランスよく配置した」と言っていたが、フタを開ければ、やはり「結論ありき」の壮大なガス抜きだった。出席した有識者のひとりも、ヒアリングのあきれた実態を打ち明ける。
6日間の会合とも報道陣に公開されたのは、各大臣の冒頭のあいさつまで。麻生財務相が会合の意義をテキトーに語り、甘利大臣が出席者の肩書を紹介すると、報道陣は会場から閉め出された。増税を巡って、どのような議論が交わされたのか。真相は出席メンバーにしか分からない。
「ヒアリング後、数分ほど質疑応答の時間が用意されましたが、政府側からの質問はほとんどなかった。誰も何も言わないから、私の方から『財務省は誤ったマクロ経済指標をいつまで使う気なのか』と逆に質問させてもらったほどです」
そう会合のシャンシャンぶりを振り返るのは、出席者のひとりで、筑波大名誉教授の宍戸駿太郎氏(経済学)だ。学者やエコノミストを招いた2日目の会合に参加し、「当面は増税を凍結して経済成長を優先すべきだ」という持論を展開した。宍戸氏が続ける。
「私どもの対面には、麻生・甘利両大臣がテーブルの中央にデンと席を構え、経済財政諮問会議の民間議員が横を固めていました。私の参加日は、有識者9人が横一列に座らせられ、順に意見を述べましたが、1人の持ち時間はたった8分だけ。参考資料をあらかじめ配布していたとはいえ、これだけの短時間で意見を伝えきるのは至難のワザ。政府側に十分に伝わったのかも疑問です」
残る8人のうち、宍戸氏のほかに「増税反対」をハッキリと唱えたのは、エコノミストの片岡剛士氏のみ。エール大名誉教授の浜田宏一氏と、クレディ・スイス証券の白川浩道氏が「毎年1%ずつ上げていくべき」と主張したが、増税自体には賛成だった。
「いま増税すれば、経済成長の腰折れを招くのは自明の理。私は経済学者として当然の意見を言っただけで、今回の有識者たちの意見が『増税賛成』に傾いているのは信じられません。結局、政府が都合の良いメンバーを選んだに過ぎず、専門家の総意は反映されていないのです。政府は私を『反増税の代表格』のように扱っていますが、私以上に激しく増税に反対している専門家は大勢います。なぜ、経済評論家の三橋貴明氏やエコノミストの菊池英博氏、産経新聞編集委員の田村秀男氏などは選ばれなかったのか。政府は『バランスを重視した』と言うなら、彼らの意見も聞くべきです」(宍戸氏)
今回の会合はしょせん「増税に向け、議論を尽くしましたよ」という安倍のポーズだ。見え透いたアリバイ工作に利用された有識者たちは、怒った方がいい。
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