民衆 茨木のり子
テープが投げられる
いろとりどりの惑乱のテープ
その華やかな捕縛のなかで
あたしは何の花のように
匂へばいいのだらう……
ふみあらされた娼婦のように
あたしたちの花園は
もう一種だけの匂ひを放ちはしない
シグナルのように転換の烈しい
「価値」の明滅のおもしろさに
奇妙な顔面神経がゆったり波うつ
今日も股には水色の疲労
ああ
こののびやかな四肢に、
似合はぬ ふてた姿勢をすてて
ひまはりのように立つ日は
何時だらう!……
どこかにそんな核がひそんでいさうで
のろのろと、
今日もポケット中を探してみるのだが……
(「詩学」1952年7月 詩人26歳)
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