2010年5月10日月曜日

湯島・根津・本郷・千駄木(9) 坪内逍遥旧居跡 常盤会跡 子規と漱石 炭団坂 宮沢賢治旧居跡 詩「永訣の朝」

本郷菊坂の一葉旧居跡の近くにあります。
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炭団坂。
写真は坂上から下を見たところ
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炭団坂を上りきったところに坪内逍遥旧居跡・常盤会跡があります。
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坪内逍遥は岐阜県出身。
逍遥は明治19年に結婚、翌20年にはこの地を離れています。
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その後に出来たのが常盤会(旧松山藩久松家の育英事業)。
漱石と子規の交遊と少し絡んできます。
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漱石と子規は、慶応3年の生まれで、子規のほうが9ヶ月遅い。
(大政奉還、竜馬・慎太郎暗殺の年、維新の前年)
漱石は、江戸牛込馬場下横町の町方名主の五男。子規は、伊予国温泉郡藤原新町で生まれ、松山藩士(御馬廻番)の次男(長男は夭逝)。
二人は、同時に東京大学予備門に入学。南方熊楠や山田美妙と同級。
東京大学予備門はその後、第一高等中学校と改称され、二人は明治21年、第一高等中学校予科(尋常中学科)を卒業。同年9月、本科一部に進む。
そして、翌年1月、21歳のとき、二人の交遊が始まる。
この年5月13日、漱石は喀血した子規を常盤会寄宿舎に見舞っている
(子規は前年8月、初めて喀血)
また、帰宅後、漱石が子規を励ました手紙が、漱石の子規宛書簡の現存する最初のものという。
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菊坂に沿って続く狭い谷合のような道を行き、一葉旧跡の少し手前右側に宮沢賢治旧居跡がある。
宮沢賢治生涯一度の上京の際の下宿。
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大正10年、妹トシが重病となり帰郷する。
(トシは大正7年、日本女子大で勉学中に発病、その後全快し花巻高等女子学校教師になっていた。
しかし、大正11年11月27日、24歳で永眠)
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宮沢賢治の「永訣の朝」は、逝った妹トシを詠った詩。
(中学校の教科書にありました)
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永訣の朝

けふのうちに
とほくへ いってしまふ わたくしの いもうとよ
みぞれがふって おもては へんに あかるいのだ
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

うすあかく いっさう 陰惨な 雲から
みぞれは びちょびちょ ふってくる
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

青い蓴菜(じゅんさい)の もやうのついた
これら ふたつの かけた 陶椀に
おまへが たべる あめゆきを とらうとして
わたくしは まがった てっぽうだまのやうに
この くらい みぞれのなかに 飛びだした
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

蒼鉛(そうえん)いろの 暗い雲から
みぞれは びちょびちょ 沈んでくる
ああ とし子
死ぬといふ いまごろになって
わたくしを いっしゃう あかるく するために
こんな さっぱりした 雪のひとわんを
おまへは わたくしに たのんだのだ
ありがたう わたくしの けなげな いもうとよ
わたくしも まっすぐに すすんでいくから
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

はげしい はげしい 熱や あえぎの あひだから
おまへは わたくしに たのんだのだ

銀河や 太陽、気圏(きけん)などと よばれたせかいの
そらから おちた 雪の さいごの ひとわんを……

…ふたきれの みかげせきざいに
みぞれは さびしく たまってゐる

わたくしは そのうへに あぶなくたち
雪と 水との まっしろな 二相系をたもち
すきとほる つめたい雫に みちた
このつややかな 松のえだから
わたくしの やさしい いもうとの
さいごの たべものを もらっていかう

わたしたちが いっしょに そだってきた あひだ
みなれた ちやわんの この 藍のもやうにも
もう けふ おまへは わかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)

ほんたうに けふ おまへは わかれてしまふ

ああ あの とざされた 病室の
くらい びゃうぶや かやの なかに
やさしく あをじろく 燃えてゐる
わたくしの けなげな いもうとよ

この雪は どこを えらばうにも
あんまり どこも まっしろなのだ
あんな おそろしい みだれた そらから
この うつくしい 雪が きたのだ

(うまれで くるたて
こんどは こたに わりやの ごとばかりで
くるしまなあよに うまれてくる)

おまへが たべる この ふたわんの ゆきに
わたくしは いま こころから いのる
どうか これが兜率(とそつ)の 天の食(じき)に 変わって
やがては おまへとみんなとに 聖い資糧を もたらすことを
わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ
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「あめゆじゅ とてちて けんじゃ」のフレーズは、容貌はアントニオ猪木のようであった国語の先生の感情こめた朗読とともに、今でも鮮明に記憶に残っています。
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宮沢賢治は、昭和3年の第一回普通選挙に際して、無産政党である労農党候補者に謄写板と金20円をカンパし、選挙事務所の斡旋もしています(応援した候補者は落選)。
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「★東京インデックス」をご参照下さい
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