2012年12月9日日曜日

生活保護基準切り下げに危機感(東京新聞)

東京新聞
生活保護 埋没ダメ 給付基準下げに危機感    
2012年12月6日 朝刊

  生活保護の利用者が、衆院選の行方に危機感を強めている。門戸を狭める政府の見直しは中断したが、民主や自民など、保護費を抑える政党の主張が目立つからだ。制度の利用を線引きする基準が下がれば、最低賃金など他の低所得者の制度にも影響するが、ほとんど話題にならない。利用者らは、「重要な争点なのに」「命の最低ラインを下げないで」と訴える。 (橋本誠)

 「私たちの声を聞いてください」「最低限の生活を保障しろ」
 五日夜、冷え込む東京・永田町の歩道。生活保護見直しに反対する利用者や支援者が、国会や首相官邸に向かって声を上げた。財務省前でも「生活保護基準切り下げ反対」と訴えた。
 今でも、利用者の生活はぎりぎりだ。先月下旬、東京・永田町で開かれた「全国生活と健康を守る会連合会」と厚生労働省との交渉に出席した毛利吉彦さん(78)=福岡県=は「近所付き合いもできない」と訴えた。「お茶に誘われても断らなくてはならず、香典も出せない」というのが理由だ。
 家賃三万円のアパートで、病気がちな妻と二人暮らし。二〇〇四年三月、脳梗塞で倒れ、三十年以上勤めた会社を解雇された。直後、四十五歳の息子が肺がんで他界。蓄えを治療につぎ込んでいたため、生活保護に頼るしかなくなった。小泉改革で月約一万八千円の老齢加算が廃止に。朝食は食パン一枚という。
 政府の見直し案では、働ける年齢層には「就労支援」の強化が叫ばれている。札幌市内のシングルマザー(31)は「働きたくても仕事がないんです」と訴える。二人目の子の妊娠で、生活保護を受給。産後一カ月で就労指導を受けたが、子どもがいるだけで面接さえ受けられない企業が多かった。
 新宿区の男性(42)は、これまで首相官邸前などの抗議行動に参加した。五年前、日雇い派遣先の仕事が無くなり、生活保護を受けるようになった。「貧困のことを知っている政治家に頑張ってほしい」と願う。


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