東洋経済オンライン
ピケティ、大御所2人と「格差」を語る
スティグリッツ、クルーグマンとの一致点
岡本 純子 :コミュニケーションストラテジスト 2015年03月11日
3月4日、ニューヨーク市のカウフマンコンサートホールで「The Genius of Economics(経済学の天才たち)」と題する講演会が、92nd Street Yの主催で開かれた。モデレーターはMSNBCのキャスターであるアレックス・ワーグナー氏。講演の模様はPCやPodcastで全編を聴くことができる。ここでは、この講演のエッセンスをお届けしたい。
(略)
スティグリッツ:
本当の問題は、われわれの経済成長の成果が平等に分配されていないということだ。中間階級の平均所得が25年前より低いことやフルタイムの中間階級の男性の平均所得が40年前よりも低いことだ。
――ウォルマートが最低賃金を引き上げる決定をしたが。
スティグリッツ:
賃金は市場原理によって決められるものではないということを意味している。一方で、CEOの報酬が従業員平均の30倍だったものが300倍にまで拡大しているということは大きな問題だ。CEOたちの生産性が10倍になったかというと、そうではなく正当化の余地はない。2010年に成立した金融規制改革法であるドッド・フランク法は金融機関に対して、より規制を強化し、情報開示をするように定めたものの、金融機関の抵抗によって、デリバティブに関する情報開示などについては後退しつつある。
(略)
クルーグマン:
米国における圧倒的な貧困、これは大きな問題だ。もうひとつ深刻なのは、ネズミレースに放り込まれたような若者層の心理状態だ。軍隊に入隊したものの、3人に1人しか残れない、といったようなもので、(中産階級のない)圧倒的な格差社会の中で、もし上流階級に入っていけなければ、医療保険もなければ、人間と してまっとうな生活をおくれない、といった状況になってしまっているのだ。
スティグリッツ:
まるで梯子の隙間が大きくて、踏み外したら、奈落の底に落ちてしまうようなものだ。驚くべきことに、米国での平均寿命は同様の所得の国と比べて低い。これは医療保険の問題ということも一因だが、それだけではなく、ストレス社会だということもあるだろう。
(略)
ピケティ:
米国の格差はほかの国に比べ顕著だ。親の所得によって子供が受けられる教育のレベルが決まってしまう。収入でみて下位20%の家庭の子供が高等教育を受けられる確率は20%しかないが、上位10%は90%の確率で受けられる。ハーバードなど超一流の大学に入る学生のほとんどは上位2%の層で、貧困層にはその機会がほとんどない。公立教育への投資、平等な教育機会の創出は非常に重要だ。
クルーグマン:
教育だけでは解決法にはならない。大学を卒業した若者の所得はここ15年横ばいで、大学に行ける人 V.S. 行けない人(で格差が開く)というようには語れなくなっている。高校の先生とヘッジファンドのマネジャーは同じような教育レベルであるが、彼らの得られるものはまったく違う。教育は人々にチャンスを公平に分配することにはなるが、生まれてしまった格差を解決するものにはならない。
ピケティ:
確かに同じような教育を受けた上位層の人たちの間の格差については教育で解決できるものではないが、下位層にとっては、(教育の喪失は)大きな機会損失(であり、格差を助長するもの)になることは間違いない。
(攻略)
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