毎日新聞 2015年06月01日 23時01分(最終更新 06月01日 23時36分)
首相の発言と野党議員の反応
安全保障関連法案を巡る国会審議で、安倍晋三首相の答弁や態度が波紋を広げている。首相は1日、質問議員にやじを飛ばした一件で陳謝したが、求められていないのに答えようとしたり、回りくどく分かりにくい答弁を繰り広げたり、というのは相変わらず。一国のリーダーの「議論の作法」はどうなっているのか。【樋岡徹也、日下部聡】
1日の衆院特別委員会で、民主の寺田学議員が中谷元・防衛相を指名し、安保法制の細部について質問した。すると安倍首相が手を挙げ、答弁しようとした。寺田氏は「中谷大臣に聞いている」と語気を強め、結局、防衛相が答弁した。一連の審議で何度も繰り返されてきた光景だ。
安倍首相はこの日、寺田氏の質疑に先だちやじ問題で陳謝した。
首相のやじは5月28日午後、民主の辻元清美議員に発せられた。防衛相への質問なのに挙手して立ち上がった首相を、辻元氏は「総理、落ち着いて。どっしりしてください」と制止。議場に笑いが起きた。その15分後。辻元氏の発言が3分あまり続き、3メートルほどの距離で正面に座った首相が叫んだ。
「早く質問しろよ!」
野党の反発で騒然とし、審議は中断した。
辻元氏は言う。「橋本さん(龍太郎首相)以降安全保障の質疑はずいぶんやったが、あんな態度の総理は見たことがない。行政が立法府に命令したということで、国会全体が怒らなきゃいけない」
しかも、首相答弁は長い上に抽象的なことが多い。初日の5月27日、維新の柿沢未途議員の質問には延々5分半の長広舌を繰り広げた。こんな調子だ。
「……リスクについては新しい後方支援のことについておっしゃっているんだろう。こう思います。これは武力行使とはかかわりのない後方支援の話だと私は今理解しているわけでございます。後方支援と武力行使を混同させない方がいいと思いますが、後方支援について言えば、武力行使ではないわけであります。つまり、一体化しないという理論のもとに我々は今度の法制を行ったので……」
1日の特別委で質問に立った民主の寺田氏は終了後、首相答弁をこう表現した。「一つの引き出しを開けて、その中身を全部出すという感じだよね」
◇批判に過剰反応する性格も影響か
安倍首相の答弁をどう見るか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、全体として「逃げの答弁だ」と分析する。自衛隊の活動範囲拡大でリスクが高まるかどうかの議論に注目し、「リスクを認めると国民の反発が強まると危惧し、何とか言い抜けようとしている感じだ」と指摘。
やじについては「長年国会を見ているが、首相が口にするなど聞いたことがない。国会で法案審議をお願いする立場で『早く質問しろよ』などと言うのは極めて非常識だ」とあきれる。「野党が非力なこともあり、なめてかかっているのではないか。批判に過剰に反応する性格も影響していると思う」
政治家の発言を分析した著書もある名古屋外国語大の高瀬淳一教授(情報政治学)は、「細かい部分を問う質問に原則論や持論で答えることで、失言を避けようとしているとも見える」と話す。
自衛官のリスクを明言しないことについては「人の命を危険にさらすな、という議論を避けるには『絶対に大丈夫』『日本全体の安全を高めるため』というレトリック(表現技法)を繰り返すしかない」と指摘する。
まっとうな質問をされても、意味を理解できずにニヤニヤ嘲笑して、結局、トンチンカンな答えをするのも、見るに堪えない。【安倍首相:やじ飛ばす、回りくどい…答弁が波紋】 - 毎日新聞 http://t.co/tyGxP5D2Ta
— 平野啓一郎 (@hiranok) 2015, 6月 1
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